短編「すべる話」


 これまで大抵は、書かざるを得ない衝動に駆られて、原稿用紙ならぬPCに向かってきたが、今回は書く事がねえのに、気を紛らせる為と、とりあえず毎日何かしら書く事で、駄文でないものを100枚ぐらいは2、3日で書けるようにする鍛錬の為、こうして筆ならぬタイピングを進めてるってわけだ。生きてりゃ材料は何かしらあるだろう。それにこれは日記じゃない訳だから面白ければフィクションでもいいわけだ。面白ければ、な。
 今週は鬱病を治すべく、布団かぶって寝込んでないで盛り場に出て行ったわけだが、独りでそういうところには行けないし、当然のごとく誘いもないので、自ら誘うというレアなアクションに及んだのだが、こういうときの人選のセレクトは、親しい人間だとうまくもてなせなかったときのショックが厳しいから、等親的なイメージで言えば4等親ぐらい、俺の最近の人生に精しいわけではないが、ちょっと前に何回か遊んだ人、ぐらいの距離の知人が良いとの英断のもと、電話帳を繰って、呼び出してみると、なんと水・木・金と、100%の確率で乗ってきた。実は、誰も乗ってこず鬱が増幅というシナリオをやや期待していた節があっただけに、いざ来られると、ノープランが露呈。アドリブには自分の定評がある俺だが、酒が飲めない俺には飲み屋という選択肢がないし、まともな遊びをやってこなかった俺はアミューズメントスポットを知らない。これまでそうした社会的な営みは極めて受動的に処してきたしっぺ返しがここでやってきた。誘っておいて、とみんな一様にびっくりするわけだが、ちょっと奇をてらって、街を散歩する、という朴訥な行為も最早アリだぞ、ということで同意した。折角新しい行動をしているので、どうせなら知らない街を探索するかということで、恵比寿、広尾界隈に繰り出した。気配りの達人である俺は、目に入る町並みという町並みにシュールな突っ込みを入れては、道中、いろいろと気の利いたジョークを連発していたわけだが、俺のジョークは、たった一つの正解しかないツッコミが繰り出されないと成立しない類いの最たるもの、かつそのたった一つの正解が繰り出されたところでほんのり面白くない事もない、ぐらいの度合いのものであるため、結局、ショージ村上みたいなトークを連発する輩、みたいなイメージを植え付けて帰路についた小波乱な三日間であった。
fin

by ichiro_ishikawa | 2009-11-14 00:51 | 日々の泡 | Comments(2)  

Commented by ハクチ at 2009-11-14 03:35 x
こうゆー書くことないときの小話がけっこう一番おもろいということに早めに気付いた方が良い。
Commented by ガゼッタベルキ at 2009-11-14 21:38 x
なんで、俺を誘わないんだ。革ジャンは用意している。
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