エセー「2009年締めくくりギグ」


 T.UTU襲来というここ10年で最悪の年となってしまった2009年。史上稀に見る逆境を屈強な精神力でなんとか乗り切りつつある今日、最後のお祓い、全てを忘れて心機一転的な意味も兼ね、横浜サムズアップにて今年最後のバンバンバザールライブ鑑賞。
 前半の白眉は「マリアッチ」で、得意の間奏での「テキーラ! マルガリータ!」で幕を開ける「スパニッシュ系単語大連呼」も、相変わらず冴えまくっていた。「ペネロペ・クルース!」「ジェニファー・ロペス!」から、「グロリア・エステファン!」を持ってきたり、「ミル・マスカラース! ドスカラース!」から「グラン浜田!」「ナチョ・リブレ!」と続け、さらにスポーツつながりで「セギノール!」から「マルカーノ!」までが飛び出す雑学教養の深さに毎度しびれる。途中、アニータ・アルバラード関連単語としてもはやスパニッシュではない「青森住宅供給公社」「消えた14億円」「千田容疑者」「山形刑務所」までまくしたてる部分はほんとものすげえ。
 他には「どういうこと」「ボウルにゼリー」といった初期名曲に興奮。「どういうこと」では、おしどり夫婦スキャットを展開。村井国夫−音無美紀子、津川雅彦−朝丘雪路、長門裕之−南田洋子、峰竜太−海老名美どり、谷隼人−松岡きっこ、で締めた。こういう人名を出させたら右に出るものはいない。また、これはコメディソングだが、サビのメロディと歌詞の秀逸さ加減はバンバンの数多ある名曲の中でも最高峰の一つ、という事に気づくのは良い事だ。「ボウルにゼリー」での「♪君みたいじゃないか」で女性客一人を狙い打って見つめ続ける芸も健在。そのとき後ろで同時に見つめる富やんのツラが実はものすげえ(分かりにくくて恐縮)。
 黒川修は、奇しくも前日俺がYouTubeに合わせ自宅で熱唱していた「Till There Was You」をボーカルで披露。「盛り場へ出て行こう」「Lover Come Back To Me」はこの時期だけにかなり沁みた。ショー終了後は、なんとセッションを展開。「All of Me」「It's Only A Paper Moon」「The Song Is Ended But The Melody Lingers On」「Jesus On The Mainline」「待ち合わせ」「ティーンエイジャー」「あの素晴しい愛をもう一度」等、名カバー連発でなかなか帰れずに困った。「スローバラード」はキーが高すぎると言ってやらなかった。そこも分かってる。


2009年12月26日(土)横浜Thumb's Up 「待ち合わせ」(友部正人カバー)
セッションにて福島氏が富やんに「あれやろうよ、友部正人さんの」と言うと、富やんは「ふと…?」と答えていた。いや違う、といって始めたのがこの「待ち合わせ」だが、富やんの言う「ふと…」とは、もしかしたら「ふと後をふり返ると そこには夕焼けがありました 本当に何年ぶりのこと そこには夕焼けがありました あれからどの位たったのか」という「一本道」の事だった!? それも聞きてかった。


 バンバンバザールはどうすげえかと言うと、ズバリ、「センスとユーモア」で、もうここに尽きる。演奏力、ボーカル等、明らかにものすごいけれど、やはりなにより「センスとユーモア」。ひどい抽象語だろうと、こう言うしかない。それが選曲、歌詞、ショーとしての出し方、MC、そして曲自体に表れている。以下、音楽性、ポップ、歌詞の点から自問自答してみる。
 音楽的に言えばブルース、カントリー、フォーク、ジャズ、ジャグを主とした伝統的アメリカン・ミュージックをベースにしつつ、単なる趣味趣味ミュージックでなく、今の音楽になっているところ。今の音楽になってなければ、オリジナルソングとして昇華されていなければ、バンバンバザールを聴かずに原典に当たればいいだけだ。直輸入でなくバンバンバザールというフィルターを通して日本風にアレンジされているという事ではない。むしろ、直輸入で、フィルターがかかっていない、当時のミュージシャン達がそのまま今この場へ蘇っている感じがする。バンバンバザールというフィルターを全く消す事で実はバンバンバザールがくっきりと表れているという逆説的な事態が起こっていて、それはやはりセンスの問題だ。そこがすげえのではないかな。
 さらにポップネス。特にオリジナルソングで顕著だが、歌謡曲ではない、あえて比して言えばブリルビル・ポップのような、洗練された非常にエヴァーグリーンなポップネスがバンバンバザールにはあって、そこが数多のルーツ・バンドとはもちろん、J-POP、J-ROCKの連中とも一線を画すところだ。この大人が聴けるポップは、そうそう出来ることではない。「論理的には」不可能な荒業だ。そして、それこそ、テレビのような不特定多数の有象無象が接するポピュラーな媒体で流れてきても、全く違和感のない、ミリオンセラーになりうるポップネスをバンバンバザールは持っている。
 そして歌詞(とMC)。基本、バンバンバザールのやっていることの根底には「笑わせる」という使命があり、ポカスカジャンや和田ラヂヲをうならせるほど隅から隅まで非常にウィットに富んでいるのだが、たとえばS先輩こと下田卓率いるカンザスシティ・バンドや吾妻光良ら、同じく歌詞やMCにひねりのあるジョークをまぶすバンドらとも「まったく」違うユーモアがある。簡単に言えば彼らが吉本だとすれば、バンバンはリリー・フランキー。前者が「落語、漫才、風刺、洒落」だとしたら、バンバンバザールは「文学」だ。微妙で複雑な部分だけれど決して曖昧ではないその一線が区切る差異が齎すものは、ものすごくでかい。

特別企画「バンバンレパートリーの他者によるカバー集」

「The Song Is Ended」Louis Armstrong with The Mills Brothers


「Jesus On The Mainline」Ry Cooder



「It's Only A Paper Moon」バンバンバザール(2008)


「All Of Me」Billy Holiday


「Lover Come Back To Me」Max Roach, Clifford Brown他


by ichiro_ishikawa | 2009-12-27 20:27 | 音楽 | Comments(0)  

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