エセー「サンバと私」


 私が実は今、サンバをやっているということは、驚愕の事実だろう。
 あるプロデューサーにその恋人を通して「なんか味がある」という曖昧な気に入られ方をした私は、誘われるがままその世界に「ままよ」と飛び込んだ。総勢20〜30人。全員打楽器+ダンサー。プロのジャズドラマーや、リオのカーニバルで踊ってるダンサーもいる、浅草サンバカーニバルの常連という結構本格的なサンバ軍団だ。

 ドタマと腹が常時うすら痛い私に、最近、「何かうすら寂しい」という、新たなうすら系が加わっていた折、実はそのうすら寂しさを払拭するために人が大勢いるところにいたかっただけ、という本当の理由を隠し、サンバ好きと偽って参加した。
 嘘とはいえ、ボッサ・ノーヴァを初めとするブラジリアン・ミュージック自体、特に、熱いけどクールなリズムに日頃から魅せられていただけに、強ち門外漢でもなく、話は結構通じるのだった。何よりベースは音楽なので、そこをグワッと通っている人間同士、根底に何か通ずるものを持っている。

 その証拠に、一般に1,2学期は「暗く地味な奴」というレッテルが貼られ、3学期から一転して人気者になっていく傾向がある私だが、そこでは、まだ1学期の4月だというのに、その暗さが実は逆にものすげえ魅力という真理をいきなり見抜かれた。イケメンとすら言い出す、実に分かってる人間も多く、チヤホヤされているので居心地がいい。私はチヤホヤされるのが好きなのだった。趣味のいい音楽を通っている人間は話が早くてよろしい。ここをはき違えてしまう人間は、「もっと明るく、スマ〜イル」とか「のだめ行こう」とか「温泉連れてって」などととんちんかんなことを要求してくる事になる。
 たまに魔がさして、そっちに振れてみるか、という気になることもあるが、結局そういうアウェイでは私の根本的な暗さと熱さは発揮しきれず、結局、誰も得をしないという悲劇に終わるので、やっぱり得意なステージで、あるがままのてめえをさらけだすに限る、と感じる今日この頃、38歳。

 だが、初めにチヤホヤされると、今度は逆に後になって飽きられるというパターンもあるため、そうなる前に一番いいところで、今まで4人でしかできなかった事をこれからは一人一人やっていきたい的な解散宣言を出して、ソロ活動に入ろうと思う保守的な38歳、冬。

by ichiro_ishikawa | 2010-01-24 19:09 | 日々の泡 | Comments(0)  

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