エセー「天災と私」


 風邪を引く、を英語では、Catch A Cold、という。直訳すると、悪寒をとらえる、捕まえる。
 日本語は、ババを引く、のように、やむなく、意志に反してつかまされる、というニュアンスがある。天災的な捉え方だ。英語は、自ら捕まえる、というような、さもてめえの意志でとらえたものという考え方で、どうも潔くない感じがする。自業自得という自嘲的なニュアンスとも言えるが、いずれにしてもその能動さに、宇宙内において、その主体の存在感が主張されすぎの感があり、どうも運命に対して人間がとる態度としては違和感がある。日本語の、何か、諦めというか、それこそ風まかせ、のような(←うまい)「引く」という表現の方が、滋味があるような気がする。

 という感慨を得たのも、外出したら必ず、いや、しなくても定期的に、相当こまめに、慎重にうがい手洗いを欠かさず行い、毎日とっくりのセーターに耳当てに毛糸の帽子、靴下2枚重ねに、モモヒキという完全防寒をしながら日々を送っていたのにもかかわらず、今期何度目かの風邪を引いてしまったからだ。この逆風がビュンビュン吹き荒れている今シーズンだけは絶対に引いてはならない、しかもパルムの僧院暮らしなので、病院はおろか、薬局やコンビニへも愛車コルベットを稼働させねばならないという逆境にあるから、毎日ドキドキ、緊張感を持っていたのにもかかわらず、だ。つらい的なことは一切おくびにも出さず、どぶに捨てちまったら一生ダンマリ決め込むタチのなので詳細は伏すが、ドタマと腹が痛くつらくて死ぬかと思った。風邪は引くときは引くな。うーん、まだまだ風向きが悪いな、どうも(←また、うまい)。神よ、さすがにもういいのでは?


by ichiro_ishikawa | 2010-01-27 02:35 | 日々の泡 | Comments(0)  

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