エセー「継続は力なり」


川上脳神経外科クリニック

c0005419_15381858.gif川上徳昭
川上脳神経外科クリニック院長。
北海道大学医学部卒業後東京大学脳神経外科教室に入局。
東京大学医学部付属病院、三井記念病院、寺岡記念病院、独協医科大学、Mayo Clinic(米国)、聖麗メモリアル病院、墨東病院、森山記念病院、Wisconsin大学(米国)、日本赤十字社医療センターを経て、川上脳神経外科クリニックを開業。


 彼は私の母方の従兄「のんちゃん」であるが、小学生の頃は毎年、母の兄が住む茨城の田舎にお盆帰りをしていて、のんちゃんは母の兄の長男なので、そこにいた。彼はいつ行っても机で勉強をしていた。いすが前後に上手くスライドできるよう畳の上にレール代わりのテープを貼ってあるのを見るにつけ、ここがのんちゃんの人生の基地なんだな…と納得した。
 壁には、自書による「継続は力なり」との習字が貼ってあってあった。
 本気でこつこつやる覚悟だ、のんちゃんは…。
 だが私は、その「継続は力なり」という言葉に何とも言えぬ恐怖を感じた。以来、「継続は力なり」や「継続」という言葉を見ると、なぜか逃げたくなる。

 私の親戚筋は、自分を含めみな相当ちゃらんぽらんだったので、こつこつやる覚悟を貫いていた彼は、ことさら目立った。その後も、茨城一の進学校・水戸一高に受かった、北大の医学部に進んだ、脳外科で働いている、アメリカに留学した、などなど、ステップごとに華々しいニュースが親戚関係の間に飛び交い、その努力が着実に実っている事を、間接的に知った。そして遂に脳神経外科の開業医となった。これが必ずしもゴールではないだろうが、傍から素人目線で見ると、とりあえず足場は固まったのではないか。
 
 結果しか見ていないので、紆余曲折もあったであろう、その間の人間ドラマは知らないが、ある一点を目指し、固い信念はまったくぶれることなく、「継続は力なり」と信じて、コツコツやり、一つ一つ目標を実現させてきたという事は、あの人ならそうだろう…と確信できる。そういう人だった。まさに、「継続は力なり」、を体現した。
 何かを「意志して続ける」という事は、基本的には不可能だろう。しかもそれを自らに強制し、かつ実行しているというのは、もはや人間業ではない…。

 今だ、私はその言葉がすげえ怖い。絶対不可能なことを見えない何かに強制されているようで、心臓に良くない。継続か…。

by ichiro_ishikawa | 2010-01-29 16:03 | 日々の泡 | Comments(0)  

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