エセー「独詠」


 世間がやけに賑やかで読書に集中できず、やるかたなく、レイ・チャールズ、そしてアリーサ・フランクリンというソウルミュージックの最高峰を大音量で聴いていた。
 あなたも参加したらいいと、隣人は親切だが、その手の喧噪に今の私は溶け込めない。作り笑いも歪む。ちょっとやる事があるので。互いにそれが方便であることを認めつつ、社交上での形式的な取引はつつがなく成立する。
 辞退の真の理由はやはり、宴終了後の己が帰路。一時の高揚は素の憂愁をさらに増長させる。そして実は、それ以上に、OFFになっためいめいの後ろ姿が堪らない。

 ソウルミュージックからジャズへと盤を変え、ポール・ブレイ、ミンガス&ブレイキーのピアノ・トリオが何回かリピートし終わったあと、斎藤茂吉歌論集に傍線を施しているうちに、いつの間にか眠っていた。目覚めるととっくに陽は沈み、まわりの家の窓ガラスに明かりが灯り、緊張した空気の中をみぞれがしんしんと舞っている。銀色の涙がこぼれ落ち、私は煙草に火をつけ、しけた気分でプカプカ吸い始めた。

by ichiro_ishikawa | 2010-02-14 18:09 | 日々の泡 | Comments(0)  

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