エセー「小説と詩」


 小説というのは事件を書くが、詩は事件そのものだ、的な事をボードレールかアランかヴァレリーあたりが言っていたのをふと思い出し、出典を明らかにしようと思ったが見つからない。ネット検索しても多分表現が違うのか、見つからない。もしかしたら、俺が寝る瞬間に、思いついたのやもしれない。
 とまれ、最近、40も近くなるとてめえの資質みたいなものが徐々に明らかになってくるのを感じる。限界が見えてくるというネガティヴな言い方はすまい。どうも、まず小説よりも詩や批評、思想、哲学といった、「事象そのもの」に迫るものを好むし、小説はまどろっこしいと感ずる。そのまどろっこしさ、細部の執拗な描写こそが小説で、それが結局事象そのものに迫っているという点では同じなので、それはそれでずいぶん魅力で、体が小説モードになるときも多いが、おおむね、やっぱり帰ってくるのは、詩だ。これは体質というか、趣味嗜好の問題か。たぶんそうだな。
 ボブ・ディランが来日しているそうで、周りがやけに騒がしいが、どうやらギターを弾かないらしい。キーボードを演っているらしい。グダグダらしい。でも「あの」ディランをこんなに間近に見られるのは貴重だからいいらしい。街を歩くと、ほとんど公害とも言える音楽が勝手に耳に入ってくるからなるべく出ないようにしているが、こうした感想も、同類だ。勝手に入ってくる。チケットを取れなかったひがみではない。俺はライヴより、彼のラジオのDJを聴いている方が好きだ。あれは相当素晴らしい。英語の勉強にもなる。何を言っているのか必死に聴くからだ。なにより、かける音楽が素晴らしすぎる。ハリー・スミスとかアラン・ローマックス的な偉業だ。
 あとは、ボブ・ディラン歌詩集。ディランの詩はすげえいい。言うまでもないが、果たして言うまでもないか、いぶかる。どこがすげえかというと、リトム(リズム)がすげえ。あれはやはり、歌の詩だ。歌って気持ちいいか、みたいなところをおそらく最重要視している。そして芳醇な含みもある。語彙がいい。表現もいい。

by ichiro_ishikawa | 2010-03-26 01:46 | 文学 | Comments(0)  

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