エセー「美と俺」


 俺はこんなツラして、実は絵心、美心がすこぶるたくましい。
 それは自然の美から、絵や建築といった人工物の造形美、人間の仕草や表情といった無常なる姿形、声や音楽といった空気の振動系、そして、思想や信念といった抽象的なものにいたるまで、竟には美のみを見る、とさえいってもよい。
 そんな俺なもんだから、この醜悪の極みたる己がツラ、これと今後ずっと付き合って行く事を思うと、早く来世をと、つい生き急ぎがちなわけだ。
 それはジョークの皮をかぶった真実的な余談としても、昨今、ひらがなの美に、いよいよ参っている。極めつけがこの書だ。


「ひらがなの美学」石川 九楊
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 先日、「常に新しい髪の切り方を考えている」という、知人の知人の美容師が行き着いたのが「ひらがな」のやわらかさだった、ということを聞いた。そのきっかけになった書がこの「ひらがなの美学」石川九楊(新潮社)だというので、聞いたその場でiPhoneからamazonで購入、一杯引っ掛けてから家に着くとすでに届いていた。
 石川九楊といえば、言わずと知れた国宝級の書家。最近の電子ブックの狂騒の中、朝日新聞紙上で「要は中味」と、四文字ですべてを射抜いた、偉人である。本書は、彼が2006、2007年に「芸術新潮」「和樂」で書いた特集記事をまとめたもの。タイトルがズバリ示す通り、ひらがなの美が、数多の図版とともに、充溢している。素晴らしい。ひらがな、美しい。

 そんなわけで、鳩居堂でしこたま粋な紙を買い込んでは、アイデアメモ(主に普天間等の政策)などを、ひらがなで書きまくっていることに加え、仕事のメールもいちいち一筆箋に手書きで書いたものをスキャンして添付で送る、という手間をかけている(ヒマではない)。カードの支払いなどでサインする時も、ひらがなに変えた。署名したいがために、西友でキャスターONEを2箱580円を買うのもわざわざカードで支払い、いしかわ いちろうと、流麗なひらがなをしたためてレジのババアをうっとりさせてもいる。さらに最近は、署名欄のスペースを無視して縦書きにすらしている。

by ichiro_ishikawa | 2010-08-11 13:00 | 日々の泡 | Comments(0)  

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