マジ傑作「B面 」

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 バンバンバザールの最新作『Side B』が、アナログ盤を先行してリリースとあいなった。
 前作『ウクレレバンバンバザール』(2008年)から2年ぶり、完全オリジナルアルバムとしては、2005年の『十』以来、実に5年ぶりとなる。
 その間は、ライブ・バンドとして毎日の様なライブ活動に加え、毎初秋に開催されている「勝手にウッドストック」というライヴ・イベント等の主催、尾藤イサオや有山じゅんじ、吾妻光良らと一曲ずつ共演した企画アルバム『One Day,One Month,One Year!』(2008年)やライブビデオ『SELF(VIDEO DE BAN BAN vol.3)』(2009年)のリリースもあったから、日々話題に事欠かないバンバンバザールではあったが、待望のという言葉が、お決まりの形容詞としてでなく文字通りの意味として立ち上がる、オリジナル・フルアルバムの登場だ。

 ジャケットがとてつもなく素晴らしいゆえ、ジャケットを部屋に飾るためにも、高価なアナログ版を即決で購入したのが、吉と出た。なんとCDも付属されている(ITunesへの取り込みが容易)という事と、サウンドがもろアナログ向けの手触りなのであった。

 内容は、ズバリ、ものすげえ。
 『SIDE B』というタイトルは単なる洒落に留まらず、一生愛すと決めたくなる珠玉のB面(B Side)集という趣がある。裏も表もねえCD、シングルでは「カップリング」と称されるそれは、レコード盤では、B面といい、音楽ファンなら、ビートルズの「Get Back」のB面「Don't Let Me Down」という例を持ち出すまでもなく、隠れた名曲とか、渋い佳曲というイメージを持つ人が多いはず。この新作は、キャッチーだがすぐ食傷してしまうことも多いA面曲を超え、じわっといつまでも抱きしめていたいB面曲的ナンバーのオンパレードとなっている。
 一聴してハートをズキュンと射抜く類いのものではないけれど(A-2「情熱のありか」あたりはややAぽいが)、「悪くない」から「おや?」、そして「こ、これは…!」、ついには「ものすげえ、すげえぇ!」と叫んでしまう曲がひしめくのだからものすげえ。現に、アナログで10回聴いたあと、裏返すのが面倒くせえから、付属のCDに切り替えて、それこそ寝るときもかけているもんだから、起きたときもそれが流れているという、まさに24時間ずっとリピートで聴いている、ここ数日の俺であった。

 前述したようにCDだとA面とB面の境がないため、アナログとCDではその音質以外に、構成の違いというものも立ち現れてくる。アナログでは、黒川修のボーカル曲でA面がおわり、「一泊、部屋はあるかい?」というリフレインが小気味いい小品でB面が幕を開けるのだが、裏返すという行為がもたらすこの間がすごく重要だ。黒川修のトム・ジョーンズ的、いやらしい世界で終わったあと、「なんかこのままでは終わりたくない気持ち悪さ」を引きずったまま、富やんのジャズ・ギターが響く小粋なナンバーで、「さあ第二部の始まり」というワクワク感が爆発する。バンバンバザールは、いつもこの幕開けのワクワク感を大事にしていて、ライブでもオープニングの登場の仕方にずっとこだわってきている。「4」の前後のライブでは、マッドネスのジャケットのような登場で「こんにちは」に入るという寸劇で始まっていた。
 そして、もはや言わずもがな、歌詞。その『B面』のA面の1曲目、「好事魔」というフレーズがリフレインされるこの言葉のセンスはどうだ。あるいは「いがさん」に続き「田代」という名字が登場する青春抒情曲では、「戸山ハイツ」が飛び出し、サールシー・アクセションの「スローバラード」の「市営グラウンド」を彷彿とさせるどころか、全体の文脈において超えてしまっている気すらする。
 
 ものすげえという衝動のあまり、やや言葉を書きなぐる感じで第一報を入れてしまったが、この傑作、いずれ全曲解説を近いうちにせざるを得ない。俺の研究・批評心をくすぐりまくる「仕掛け」に対して細かくちまちま解説していきつつ、一曲一曲、そして全体の、その本質をズバッと射抜かんとす。というか、直覚した「この感じ(That Feeling)」を言葉にして整えずには、おちおち眠れない。

by ichiro_ishikawa | 2010-08-16 01:44 | 音楽 | Comments(0)  

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