ミッドナイト論考「牙」


 ほんと、人生というのはじめじめと暗く腐った憂鬱なものだが、その酷さを正確に表すためには、実相に観入して真実の言葉を見つめ、捉える辛抱強さと、それを伝える捌く技術の、両方が同時に必要となる。
 自分の中の最も激しい、牙の部分。それを出さずに事の本質を如何に正確に表現するか。やりたいようにやるのは技術的には簡単な事だ。しかし、悲しいかな、やりたいようにやっては一切伝わらない。どころか誤解される、いや、聞く耳を持ってももらえないというのが常だ。何より、その正直で直接な表現は、本質を矮小化しぼやけさせてしまう。尖った表現というのは得てして稚拙という衣をまとっている。じめじめと暗く腐った憂鬱な人生。をいかに、じめじめと暗く腐った憂鬱な人生と言わずに表すか。
 問題は、その激しさを、いかに鎮め、牙を見せることなくその本質を明かすか、という事だ。それは、毒を薄めることでも、平準化する事でもないし、普遍的な言葉を見い出す事でもない。
 その牙とは、別名、エゴであろう。無私、中庸の実践とは相当に難しい。


 

by ichiro_ishikawa | 2011-03-10 00:54 | 文学 | Comments(0)  

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