無趣味のすすめ

 村上龍の『無趣味のすすめ』が単行本未収録作品を追加して文庫化された。良書。

 村上龍は、G2010や無料メールマガジンJMMなど、ノンフィクションでの活動の方が無駄がなくて、良い。この『無趣味のすすめ』も非常にキレがよく、老いてなおその眼力は鋭さを増しているように思われた。
 余談だが、初出は蔑視している『GOETHE』なので、これが初読。幻冬舎は「24時間仕事バカ」などのように、キャッチに文学的・ロック的なセンスが感じられないのと、尾崎(タイガーではない、念のため)的メンタリティが性に合わないので普段は全く用はないが、そこに親しい村上龍は、別に、いい。

 本書で相変わらず村上龍は、事象の本質を正しく射抜いていた。現実を直視し、低くも高くも見積もらない。悲観も楽観もしない。ありのままを見る。
 とはいえ、現実を直視できないために愚かな思考、行動をとる政治家をも含む衆愚、および彼らが導く社会、国家の未来については、恐ろしく悲観している。しかし、その悲観こそが現実を正しく見ているその証左である。

 論の運びは大抵こうだ。
 あるテーマがあり、それに対しての一般的思考なり、行動なりがまず示される。次にそれがいかに愚かかが説明され、そのテーマの本質的問題を明かしてみせる。そして最後に、本来考えるべき、行動すべきことはこうである、と結論づける。その断定は、一見逆説めいているが、正しく本質が見据えられている。冷めもせず興奮もせず語るそのトーンも心地いい。
 
 珍しく一例を挙げる。
 テーマは社会貢献。ニートが社会貢献の使命にかられ被災地に行く。それは美談めいているかもしれないが、実はそれよりも、彼がきちんと働いて税金を納めた方が社会貢献としてはよほど価値がある。要は、社会貢献は、社会的に自立していなければ為し得ないのだ。と書く。
 こんな調子で、ワンテーマ3ページほど、全61テーマ。
 サンデルや、あるいはジョブズなどより、エンタメ的、物語的要素が薄いため、私にはこの村上龍の方がしっくりくる。

by ichiro_ishikawa | 2011-04-28 01:53 | 文学 | Comments(0)  

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