ホワイト・ブルーズ

 ホワイト・ブルーズ、ブルーズを直接ベースとしたロックというのは、これまで避けてきた音楽のひとつだ。いわゆる“泣き”のギターがあまり好きではないし、「7th系3コード」という形式が古典的に過ぎると感じていたし、インプロヴィゼーションのマスターベーション的悦入り感が気持ち悪かった。長髪にほこりまみれのブルージーンズ(ベルボトム)というなぜか彼らに共通の出立ちも、あまりに男性的で、かつ極端な懐古主義と映った、ということも遠ざかった理由かも知れぬ。
 U2、ジョンスペンサー・ブルーズ・エクスプロージョンやベック(・ハンセン)といったブルーズをベースとしながらも独自の解釈の元、新しい音を鳴らしているものでなければ、聴く気が起きなった。いわゆる3大ギタリストの中でも、ジミー・ペイジのポップ/ファンク、リフ系リズムギターに魅力を感じたし(音に呼応するギターの構えの低さも然り)、明らさまなブルーズリスペクトを標榜するエリック・クラプトン、技巧に走るあまりフュージョン化したジェフ・ベックからは距離を置いていた。
 ところが、アメリカン・ルーツ・ミージックを繙くうちに、そうした白人ギタリストの“ブルーズ愛”がとても腑に落ちるようになってきた。彼らは必ずしも懐古主義ではなく、温故知新なのだった。
 ピーター・バラカンが絶賛するジョン・メイオール&ブルーズ・ブレイカーズ(with エリック・クラプトン)をきっかけに、ヤードバーズ、クリーム、ブラインド・フェイスとクラプトンの変化を辿り、デレク&ザ・ドミノスの『レイラ』でのデュアン・オールマンとのギター・バトルまで聞き込むにつけ、その魅力は一層輝きだす。ポール・バターフィールド・ブルーズ・バンドのマイク・ブルームフィールド、ブルームフィールドとスティーヴン・スティルズ、アル・クーパーのスーパー・セッション……。今までなぜ避けてきたか俺、とてめえを訝った。こうなると、逆に鳴海頁のギターがなんだか間抜けな感じに聴こえてくるから不思議だ。

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 とまれ、ホワイト・ブルーズというのは、モノホンの黒人のブルーズと明らかに音が違う。黒人のブルーズはやはり悲しみという感情の発露だが、ホワイティらのそれは、その形式の模倣であり、発現しているものは哀しみの感情ではなく、もっとアーティスティックなものだ。そこには、黒人のようには弾けないし、そもてめえは白人という自覚から来る批評精神が働いている。だから、優れたホワイト・ブルーズマンの奏でるブルーズは聴けるのだった。
 表現というのは、感情に端を発しているにしろ、その感情を整える作業が必ず付きまとう。その作業が内省であり、結果、精緻に整えられた感情は極めて個人的でありながら普遍に達し得る。ただの泣き声は表現とは言えないし、つらさや哀しみをそのまま吐露されても、身内でもなければとても受け止められたものではない。そうした、非常に抑制の利いた「シャウト」というものは、白人でならではの魅力だと感じる。
 ことロックの世界だけでも、まだまだ知らない世界は多い。ほかにもフォーク、カントリーなどまだまだ未知の森はそこにある。ハリー・スミス編集によるアメリカン・ルーツ・ミュージックの『アンソロジー』を今入手せんとしている。そこから帰ってきてのロックにもまた新しい輝きを見い出すことになる思うと心が弾むし、「とりあえず夏までは生きていよう」という気にもなる。
 だが、こんなことしてる場合じゃない。

by ichiro_ishikawa | 2005-05-18 20:52 | 音楽 | Comments(7)  

Commented by BECK at 2005-05-19 00:33 x
Jack Johnsonも聴いたほうがいい。
あれは、スゲー!
生き方からして、もはや理想。
Commented by ichiro_ishikawa at 2005-05-19 11:41
最近、Jack Johnson聴け聴けと強要されること多し。その強要、悪くない。今週末には及ばんとす。ちなみにマイルズ・デイヴィスのファンク/ロックの傑作『tribute to Jack Johnson』もいい。
Commented by こなの読んでる場合じゃない at 2005-05-19 12:24 x
「あ、これしてる場合だ」という事柄はこの世にあるのですか?
Commented by ichiro_ishikawa at 2005-05-19 13:02
問いの面白さに比べたら答えなどどうでもよくなったので答えない。
Commented by koz-mic at 2005-05-19 15:34
はじめまして。フラフラしてたらここにたどりつきました。
ホワイトブルーズに目覚めたとの事。
ぜひ、ブルースブレーカーズでのクラプトンの後釜
ピーターグリーンも聴いてみてください。
すでに聴いているかもしれませんが。
それとギターにフレディ・ロビンソン、トランペットに
ブルー・ミッチェルを擁した70年代なかばの
ジョン・メイオールもいいです。
アメリカンルーツミュージックもいいですね。
Commented by ichiro_ishikawa at 2005-05-19 18:03
ピーター・グリーンはフリートウッド・マックを聴いて感動を憶えていた矢先、ブルースブレーカーズでのものは未聴でした。70年代半ばのジョン・メイオールも非常に興味深いのであわせて聴いてみます。
ジャズも大好きですので、ちょくちょく貴ブログも拝見しようと思っています。
Commented by パプキン at 2005-05-30 19:17 x
「こんなことしてる場合じゃない」は英訳すると、I don't have time for this.らしいですぞよ
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