「クイズ・えらい人の心中」第1回:伊藤仁斎の答え

 例えば、彼の心は、きっとこんな具合に動揺していたに違いない。
 論語が聖書である位なことは、誰でも知っている、子供でも知っている、だが、本当に知っているか。自分が、数十年来、論語を熟読して来た経験によれば、論語を「学ンデ知ル」ところと、論語を「思ツテ得ル」ところとは、まるで違った事なのである。今日、自分が、その「思ツテ得タ」ところに従って、注解を書こうとし、この書について、今更のように新たにした驚きを「最上至極宇宙第一」という言葉で書き表わそうとした。これは、大げさな言葉ではない。これ以上大げさな言葉が見付からぬのを悲しんでいる自分の心事が理解されるだろうか。それは覚束ない事である。いっそそんな事は何も言わず、黙って注解だけを見て貰う方がよかろう。しかし、どう注解してみたところが、結局、「最上至極宇宙第一」と注するのが、一番いいという事になりはしないのか。

小林秀雄版「学問のすすめ」
『考えるヒント2』所収「弁明」(文春文庫)より

by ichiro_ishikawa | 2005-11-04 19:37 | 文学 | Comments(0)  

名前
URL
画像認証
削除用パスワード

<< 新企画「カウントダウン・マガジ... 新連載「クイズ・えらい人の心中... >>