歌手ザベストテン

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 あえて歌手と言う。シンガーと言っても同義だが、この外来語はいささか乙に構えすぎている節がある。あえて歌手と言うことで、より、声そのものと歌唱の魅力という点に照準を絞れる気がする。
 黒人をあげていったらきりがないので、除かざるを得なかった。レイ・チャールズ、サム・クック、オーティス・レディング、ドニー・ハザウェイ、マーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダーと、やはりきりがない。また、黒人とそれ以外を同じ土俵でランク付けするのに抵抗を感じたことも除去した一因。このカウントダウンの裏テーマは、黒人にも匹敵する歌手たち、であるやもしれぬ。
 また、奇しくも、カラオケで一番歌っては行けない歌手リストにもなっている。女性も省いた。ややこしくなるから。女性については近日公開「女とロック」で、詳しく触れる。


13.グレン・ティルブルック(SQUEEZE〜ソロ)
c0005419_21193795.jpgいきなりマニアックだが、レノン/マッカートニー、スティング、コステロと肩を並べるすげえシンガー/ソングライター。実は1位といってもいい。とにかくすげえいい声。
「グレン・ティルブルックは、僕が今まで聴いたなかで最も素晴しく、最もメロディックなソングライターであり、 素晴しいシンガーだ」(ロン・セクスミス)



12.長渕剛
c0005419_1703961.gif透き通るような美声時代(1978〜1980)に始まり、年代を追うごとに声質、歌い方を変えていった長渕。地声に近い声域でのささやき歌唱から、かなりのハイトーンで歌い上げるものまで、長渕は、その歌のうまさこそ特筆されるべきことなのだ。近年のしゃがれた歌い回しはいささかいただけないけれど、1990年頃までは、どれもすごい。シャウトの説得力は、歌にかける覚悟の違いを、凡百のミュージシャンに見せつけている。



11.ミック・ジャガー(The Rolling Stones)
  レイ・デイヴィス(The Kinks)

c0005419_1702127.jpgc0005419_1783345.jpg1960年代のスウィンギン・ロンドンを牽引した40年代生まれのイギリス人は、黒人ブルース、R&Bの物まねから入った。いかに黒人のように歌うかに賭けていた。ストーンズとキンクスだけが今なお現役なのは、このフロントを務めるソウル歌手のカリスマ性によるところが大きい。



10.ヴァン・モリスン(Them〜ソロ)
c0005419_1659548.jpg世界の白人の中で最も黒人なヴァン・モリスン。作品ごとに様々な音楽的アプローチを見せるが、そのソウルフルな歌声は通奏低音として不変。『Astral Weeks』を聴いているとなぜか涙が止まらない。



9.ボノ(U2)
c0005419_16594366.jpgアイルランド人というのは、ヨーロッパの黒人と言われるほど、根本的にブラックなフィーリングを持つ人が多い。前述のヴァン・モリスンに続き、またしてもアイリッシュの登場だ。ボノは、歌が抜群にうまい。低音のセクシーさ、ハイトーンのシャウト、ロックンロールからゴスペルまで、付け入る隙がない完璧さ。そして、その驚くべき声量も特筆に値する。そういや、モリッシーもコステロもレノンも、みなアイリッシュ系なのだった。



8.大滝詠一(はっぴぃえんど〜ソロ)
c0005419_16593146.jpgはっぴぃえんど的な黒人、ロック的なアプローチと、『A Long Vacation』などに見られる純粋な歌手としての歌唱、どちらも素晴らしい。ソングライターとしての評価が高いが、実は何よりも歌手としての才能がずば抜けていることに気づくのはいいことだ。プレスリーから始めた人なのだ。また、ルイ・アームストロング風もとんでもない。



7.モリッシー(The Smiths〜ソロ)
c0005419_16591981.jpgこのリストの中で、最も黒人から遠く離れた歌手。ヨーデル調の歌唱が特徴だが、腹を抉るような絞り出すような呻き唱法もいい。変態歌手は基本的に好みじゃないのになぜモリッシー?という向きもあるようだが、モリッシーは変態じゃない。言動は変態だが、歌唱、すなわち精神はロック。ただ、「Still Ill」ではあるだけだ。兎にも角にも、最も言わなければならないのは、モリッシーの歌声は、優しい、ということだ。




今週のスポットライト
福島康之(バンバンバザール)
c0005419_1727783.jpg94年デビューなので、まだサンプルが少ないため同じ俎上には乗せなかった。より黒人ブルース色を強めてきた近年の掠れ声も素敵だ。口上も素晴らしく、ライヴ盤でもそれは聴ける。詳しくはバンバンマガザンで書くからここでは書けないのが残念。



6.鈴木雅之(シャネルズ〜RATS & STAR〜ソロ)
c0005419_1659792.jpg歌手というのは俺が最も憧れる職業だ。それは、「左の本格派(本格左腕/サウスポー)」以上である。ロックロックといいながら、歌謡曲が音楽原体験の俺は、「歌もの」に滅法弱いのである。ロックには必ずしも「歌」はなくてもよく、演奏に主眼があるものがすげえ好きである一方、「歌もの」も決して看過できない存在、というか、そっちの方が好きなのかも知れぬ。アルバムよりシングル、なのやもしれぬ。だからi-podsをシャッフルで聴くのが好きなのやも知れぬ。
マーチンこと鈴木雅之は、テレビのザベストテンでシャネルズとして聴いていたから、今回のリストの中で最も早くてめえの人生に登場してきた歌手である。当時の歌手としては、沢田研ニという惜しくも13位で、ランクから外れてしまった人もいるが、ダントツでシャネルズがよかった。単に曲が良かったのだけれど、氷室が89年に雑誌pia music complexで「好きなんだよな、こういう声」と言っていたことで再注目したのだが、大人になってから改めて接するに、シャネルズ〜ラッツは、何より鈴木雅之の声がすげえのだということが明らかになった。俺には黒人と鈴木雅之の声の区別ができぬ。黒人のように歌えるという意味ではイエローモンキー1である。このテの地声が低い人が出すハイトーンはやはり特権と思わざるを得ないのだが、そのセクシーなことといったら! そりゃ大滝詠一も認めるだろうよ。この声はとんでもない。特にシャネルズ〜RATS & STAR時代の太く低い声質で歌い上げるテノールには、しびれる。ハイトーンで掠れるハスキーな響きも秀逸。ずっと聴いていたい。日本人で一番黒人。



5.マイケル・スタイプ(R.E.M.)
c0005419_16585629.jpgR.E.M.は曲がいいのか、ギターがいいのか、ボーカルがいいのか、はっきり言えないところがある。もちろん全ていいのは言わずもがなだが、あえて個人的な見解を述べれば、声、となる。ボリス・ヴィアンの台詞を引用して「電話帳を読み上げても泣かせる声」と、自ら自覚、豪語しているその声は、黒人とも伝統的な歌手とも違う、実にロック的というか詩的というか、誤解を恐れずに言えば文学的なものだ。文学とは文で成り立つが故、音声を文学的などというと比喩を弄しているようで恐縮だが、いまはそうとしか言えぬ。



4.エルヴィス・プレスリー
c0005419_16584578.jpgセクシーだ。ベタベタな感はあるけれど、それはエルヴィスのヴォーカルを何ら損なうものではない。激しいロックンロール、甘いバラード、シャウト、ヴィヴラート、ロック・ヴォーカルのすべてがある。やはり、はじめにエルヴィスありきだ。



3.エルヴィス・コステロ
c0005419_19283040.jpg一番好きな類いの声。歌というのは基本的に地声をオクターブ上げて歌うものだが、「基本的に〜というもの」というものに常に抗う属性のあるロックにおいては、そうしたことが往々にして破られるけれど、ポップに重きをおいているミュージシャンは、形式や伝統に比較的忠実に、ある意味、その枠内で、あらゆる可能性を求める。コステロはそうしたロックミュージシャンだ。コステロを初めて聴いたときは、反骨、前衛、ミュージシャンズ・ミュージシャンなどという事前情報を見事に裏切る、歌謡曲すれすれのポップなロックだったことに面喰らったのを覚えている。
コステロの歌はどこを切ってもとんでもないけれど、際たる魅力のひとつは、ハイトーンだ。俺はハードロック、メタル系の金切り声、女性j-popperの、あのキンキン声、高音、というやつが凄く苦手なのだが、音域的にはコステロも同じぐらいのところのはずだが、コステロのハイトーンは、黒人っぽいフィーリングがあり、そこがすげえいい。それは地声が凄く低く太いということが大きいかも知れない。「低く太いハイトーン」というのが、いいのだろう。掠れ具合もいい。またコステロは、声量も大きい。数年前、NHKホールでアカペラで歌った「she」は震えた。大歌手である。



2.ジョン・レノン(The Beatles〜ソロ)
c0005419_19305723.jpgジョン・レノンを語るには実にいろいろな切り口がある。語るに余りあるいろいろな重要な要素で満ちている所以だろうが、ということは、どれを語っても何かが語り落ちるということで、それが俺がレノンをあまり語らない理由になっている。俺がレノンをあまり語らないことなど知らんだろうが。それでも何かを言うならば、そして家に戻って「また嘘をついっちった」と落ち込まないとするならば、それは、声、なのだった。レノンは、何をおいてもまず、歌手として凄いのだ。それが、レノンの全てとさえ言いたい衝動に駆られる。世界をひっくり返したのは、その声だ。ああ、すげえ。



1. 氷室京介(BOφWY〜ソロ)
c0005419_1658470.jpgそんなレノンを凌駕するのが氷室だ。まあ、異論はあるだろう。あるいは個人の趣味だからとただ看過する冷静な知識人もいるだろう。が、声ということでいえば、申し訳ないが、レノンを上回るというのは厳然たる事実だ。現実を直視したくないのは、俺も夢想で食っているので重々わかるが、事実は悲しいかな事実だ。いや、別に悲しくはない。いずれにせよ、比較は止めよう。このカウントダウンは、順位づけに主眼はない。カウントダウンのワクワク感を出したいがために、便宜上順位付けているだけで、日替わりなのだ。ただ、そんなでかい変動はないけれど。
氷室も、長いキャリアを持つミュージシャンの御多分に洩れず、唱法、声質に変遷があるけれど、最もすごいのは「Only You」を頂点とするBoφWY中後期だ。初期の荒々しいとんがりまくったパンクな感じもいい。ソロの「艶」を強調した感じもいい。でも、BoφWY中後期の、荒々しく暴力的ながらも甘く優しくセクシーであるという奇跡が起こっているヴォーカルは、本当にヤバい。地声はそんなに低くはないけれど、根っこはコステロや鈴木雅之の系統で、黒人の臭いムンムンのソウルフルな声質である。だからハイトーンは艶やかで、ややハスキーだ。低音というやつは、結構誰が出してもセクシー足りうるのだが、セクシーの次元が違う。ソウル、ブルースのそれである。あるいはやくざのドスが効いている、といってもよい。また、93年から歌詞を職業作家に委ねているので、単純に音として声に対峙できるというのも都合がいい。ただ、ソロはギターの音が良くないのが残念だ。ずっと声だけ聴いていたい。

by ichiro_ishikawa | 2005-11-24 11:00 | 音楽 | Comments(1)  

Commented by ミックジャガー at 2005-12-01 15:30 x
リーメイヴァースがはいっていないのが
さみしいが、ティルブルックが入っているから許しちゃう。
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