バンバンバザール富永寛之は文もすげえ

 このロックンロール・ブックでは、音楽に関することを言葉で表現しているけれど、主眼は、どちらかと言うと、「音楽の深部で蠢いている何か、俺のハートをズバッと射抜くものの正体」を表すことにあって、四苦八苦しながらも、なんとか小林秀雄ばりに対象と絶妙なダンスをしたいものだ、と無謀な理想を掲げているわけだ、実は。だが、その「何か」「正体」を表す際に不可欠な作業のひとつが、客観的な事実関係の考察と「音楽的な」分析なのだけれど、熱心な12人の読者なら御承知の通り、そこが特にすこぶる甘い。データはほとんど記憶で書いていて滅多に裏は取らないし、特にジャズとかになると「音楽的に」どういいかを語ることはお手上げだ。 

 バンバンバザールの富やんこと富永寛之氏(g)のコラムを読むと、その広く深い音楽知識と、ジョークという謙譲に包まれた鋭い洞察力、緻密な音楽考証に感服する。ギターの弦もまともに張り替えられねえ俺なんかが音楽について語っちゃいけねえな、と思わされてしまう。

 そもバンバンバザールというバンドが、戦前のブルーズ、ジャズ、ジャズ・コーラス、ジャイヴ、ジャンプブルーズから、フォーク、カントリー、ポップ、リズム&ブルーズ、ソウル、ロックまでと、恐ろしく幅広深い音楽性を懐に抱いているわけで、その辺のものは言わずもがな、クロスオーヴァー、フュージョン、ハードロックや、なんと昭和全体の日本のポップスまでにも極めて造詣が深いという、その懐の深さには畏れ入るばかりだ。それが50〜60代の人ならともかく、富やんはまだ30代半ば、高校1年で昭和が終った世代なのであった。

 いずれにせよ、自分の狭隘さを痛感させられるし、音楽の森にはまだまだ知らないすげえ世界があるということを教えてもらえるので、生きる目的が見つかって嬉しい。


c0005419_16145018.jpg
福島康之(vo,g,司会進行)「そこんとこ4649」、黒川修(b)「Curly's EYE」もミュージシャンのよくあるユルユル・コラム、マニアック・コラムとは一線を画すハイ・クオリティな文の芸を展開。ココから「MEMBERs ONLY」へ。

by ichiro_ishikawa | 2006-05-30 16:20 | 音楽 | Comments(1)  

Commented by シュラ at 2006-05-30 20:33 x
このロックンロールブックにとりあげられるだけのこつはある。
ものすごいクオリティーに仕上がっている富やんのコラム。その音楽の知識より、ギャグのセンスがかなりハイ。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

<< コステロ&トゥーサンがやってきた 哀悼、ジーン・ピットニー >>