グレン・ティルブルック来日公演速報

グレン・ティルブルック来日公演
2006年10月14日(土)東京・南青山マンダラ

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 グレン・ティルブルックと言ったって、おそらく誰も知らないだろうし、スクイーズのギター&ヴォーカル、とその出自を説明したところで、そもスクイーズとは? ということになろう。
 これは本当に残念な事だ。グレン・ティルブルックが、スクイーズがあまり世に知られていないという事が残念なのではない。スクイーズとは?と愚鈍に訊いてしまう、その、スキだらけのあなたの人生が、残念でならない。

 グレン・ティルブルックは、元スクイーズのギター&ヴォーカル。
 スクイーズとは、78年に『Squeeze』でデビューしたイギリスのバンドで、音楽的には、ポール・マッカトニー寄りのザ・ビートルズ、ザ・キンクス、エルヴィス・コステロ、XTC、クラウデッド・ハウスに近い。伝統的な英国ギターポップに、ニューウェーヴのエスプリが利いた、知的な大人のポップバンドだ。
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      1982年のスクイーズ。中央がグレン・ティルブルック

 なんと言っても、クリス・ディフォードの作詞と、グレンの作曲によるソングライティング、そしてグレンのヴォーカルが秀逸なバンドだ。要するに、2枚看板で、これは、レノン&マッカートニー(ザ・ビートルズ)、ジャガー&リチャーズ(ザ・ローリング・ストーンズ)、レイ&デイヴのデイヴィス兄弟(ザ・キンクス)、モリッシー&マー(ザ・スミス)、アンダースン&バトラー(スウェード)、リアム&ノエルのギャラガー兄弟(オエイシス)と続く、英国2枚看板バンドの系譜に連なり、その中でも、トップクラス、つまり、レノン&マッカートニー(ザ・ビートルズ)に並ぶ、と言っても、イギリス人だったら「Definitely」、あるいは「Absolutely」と、うなずくはずだ。

 ただし、グレンは作曲とギター、ヴォーカルだから、作詞もするレノンやマッカートニー、レイとは違うし、基本的には歌唄いのジャガー、モリッシー、アンダースン、リアム、ギター弾きのリチャーズ、マー、ノエルとも異なる。
 そういう意味では、歌を歌ってメインギターも弾く、ジェームス・ディーン・ブラッドフィールド(マニック・ストリート・プリーチャーズ)、ポール・ウェラー(ザ・ジャム〜スタイル・カウンシル〜ソロ)寄りだ。
 つまり簡単に言えば、シンガー・ソングライター寄りだ。とはいえ、詩を書かないから、正確には、「主義主調の無い、流しのミュージシャン」といった方がいい。

 そんなグレンが、東京に流しに来た、といった感じのギグだった。
 青山の「マンダラ」という渋いハコで、モンティ・パイソンを彷彿させる、英国ギャグ満載のマシンガントーク&アクションを随所に挟みながら、矢継ぎ早に曲を繰り出していく。40曲ぐらい演ったのではないか。
 自作曲以外では、ジミ・ヘンドリックス「Voodoo Chile」(物まね付き)、ザ・キンクスの「Sunny Afternoon」を轟かせた。驚きだ。

  グレンの魅力。
 声がすげえいい、歌がすげえうまい、ギターがすげえ良くて、すげえ上手い。「その声とそのギターの腕だったら、その1セットだけで一生食って行けるのでは?」と思ったが、「あ、実際、食ってるか」と、ひとりごちた、と言えば、分かるだろうか。
 そして、なにはともあれ、メロディが、おそろしく、いい。ポップなのだが決してベタではなく、シンプルで、少ーしだけひねった、微妙な音の連なりが、ゾクゾクッと来る。一聴して、「いい!」と思わせるわけではないが、ふとした時に「クワッ!」と来て、来たら最後、以後、ずーっと己が脳髄にこびりついて離れない、といった類いの、いいメロディだ。


この日、すげえ良かった曲、ベスト5(順不同)
Squeezeを聴いてみたい人は、ここで試聴されたし
(iTunes StoreでのiMix by ロックンロール・ブック)

1.「Up The Junction」
from Squeeze『Cool For Cats』(1979年)

c0005419_1423588.jpgスクイーズ中、ベスト3に入るナンバー。地味に淡々と進む中、最終的に、号泣している自分に気づくはず。



2.「King George Street」
from Squeeze『Cosi Fan Tutti Frutti』(1985年)

c0005419_143420.jpg今回は、一発目、ピアノ弾き語りで披露。『Cosi Fan Tutti Frutti』は、比較的地味な作品だが、静かな名曲が多い。



3.「By Your Side」
from Squeeze『Cosi Fan Tutti Frutti』(1985年)

c0005419_143420.jpgこれも「King George Street」と並び、静かな名曲。クワッとくる。



4.「Another Nail In My Heart」
from Squeeze『Argy Bargy』(1980年)

c0005419_1434387.jpgコステロばりのポップチューン。『Argy Bargy』は布袋と氷室の青春の1枚としても有名。




5.「Black Coffee In Bed」
from Squeeze『Sweets From A Stranger』(1982年)

c0005419_1441167.jpgオーディエンス参加型スクイーズの代表曲。
アンコール最後の曲として、我々はコーラスを担当。グレンがはじめにやり方を指示するも、オーディエンスはすでに知っている、言わずもがなという濃い空間がそこに。



6.「Hourglass」
from Squeeze『Babylon and On』(1987年)

c0005419_1445690.jpg早口でまくし立てる軽快なポップソング。レコードではエレキのギターソロをアコギで同じようにやった。




7.「If It's Love」
from Squeeze『Frank』(1989年)

c0005419_1453174.jpgスクイーズを代表する小粋なラブソング。クリス・ディフォードの詩がすげえ。オーディエンスがコーラスで参加。


8.「Tough Love」
from Squeeze『Babylon and On』(1987年)

c0005419_1445690.jpg隠れた名曲、ということを今回のギグで再発見した人は多いはず。



9.「Tempted」
from Squeeze『East Side Story』(1981年)

c0005419_148025.jpg世間的に最も有名と思われるスクイーズの代表曲。映画『リアリティ・バイツ』でウィノナ・ライダーとその友人がカーステから流れるこの曲に合わせて歌っているシーンは秀逸。レコードではポール・キャラックがヴォーカルで、グレンはサブだが、今回は、当然全部一人で歌った。


10.「I've Returned」
from Squeeze『Sweets From A Stranger』(1982年)

c0005419_1441167.jpgヴォーカルはじまりのナンバー。グレンの声は本当にすげえということがよく分かる。



11.「Jolly Comes Home」
12.「Some Fantastic Place」
13.「Third Rail」
from Squeeze『Some Fantastic Place』(1993年)

c0005419_2183543.jpg個人的な話で恐縮だが、93年のリリース時、ロンドンで買ったアルバムのナンバー。当時スクイーズがロンドン郊外でライブを演るというので、日本では絶対見られないだろうと、大枚はたいてわざわざ駆けつけたのだった。だが、半年後の94年2月。きゃつらは初来日を果たした。


14.「If I Didn't Love You」
from Squeeze『Argy Bargy』(1980年)

c0005419_1464292.jpgアルバム発売時、この曲が実はシングルカットされていたという事実は、スクイーズマニアの中でもあまり知られていない。地味なポップの中でもさらに地味なポップソングのこの曲がシングルつけ!


15.「Annie Get Your Gun」
from Squeeze「Annie Get Your Gun EP」(1978年)
スクイーズ最初期のナンバー。のっけから風刺が効いている。


16.「Take Me I'm Yours」
from Squeeze『Squeeze』(1978年)

c0005419_1461362.jpgスクイーズ最初期のナンバー。レコードはニューウェーブ色が強い。



17.「Untouchable」
18.「Neptune」
19.「Hostage」
from ソロ・アルバム『Transatlantic Ping Pong』(2006年)

c0005419_149487.jpgスクイーズに比べるとさらに地味になった印象があるが、相変わらずのグッドメロディーメイカーぷりを発揮。長く聴き続けられそうな大人のポップアルバム。


総評
スクイーズはアレンジも秀でているが、なんといってもヴォーカルとメロディがすげえので、この「グレン・ティルブルック流しライブ」で、その魅力のほとんどを味わえるし、逆にヴォーカルとメロディだけに特化している分、誤魔化しが効かないため、いよいよそのすごさが明るみに出たという次第だ。
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by ichiro_ishikawa | 2006-10-15 23:49 | 音楽 | Comments(0)  

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