ヴィム・ヴェンダース『Soul Of A Man』を観て

 マーティン・スコシージ総指揮による映画シリーズ『THE BLUES』からの第1弾、ヴィム・ヴェンダーズ監督『Soul Of A Man』を観た。この映画はブラインド・ウィリー・ジョンソン、スキップ・ジェイムス、J.B.レノアーという3人のブルース・ミュージシャンにスポットライトをあてた作品。彼らは、20~60年代にかけてレコーディング活動を行い、少しは知られた存在となったが、最後は貧困の中、人知れず亡くなっていったという。
 本作は、3人のアーカイヴ映像や役者を使ったドラマを中心に、当時を知る関係者らのインタビューと、現代のミュージシャンによる彼らの曲のカバー演奏を随所に盛り込みながら、彼らのミュージシャンとしての生涯を紹介していくというもの。
 現代のミュージシャンは、こんな面々。マーク・リーボウ、Tボーン・バーネット、ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ、ロス・ロボス、ボニー・レイット、ルー・リード、ベック、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン、イーグル・アイ・チェリー、ジェイムズ・ブラッド・ウルマー、ヴァ‐ノン・リード、カサンドラ・ウィルソンほか。そして、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズとクリームはアーカイヴ映像で登場ときた。
 これだけの人たちを一挙に見られるというだけでもすごい。特に、ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ、ベック、ジョン・スンサー・ブルース・エクスプロージョン、ジェイムズ・ブラッド・ウルマーがよかった。カッコよかった。
 ただいかんせん、各々の演奏時間が短い。ストーリーなどどうでもいいから、スキップらのアーカイヴ映像をバックにひたすらレコードを流し続け、ひたすらこいつらの演奏を映し出してほしかった。

 ブルースはよくアメリカの演歌といわれるけれど、それは気の利かないジョーク、間の抜けた洒落にすぎない。確かにどちらも哀しみを歌うけれど、演歌が「哀しい、そんな俺および俺の人生悪くない」という隠れた自己肯定があるのに対して、ブルースは「哀しい、ただ哀しい」という叫びであるという点が決定的に違う。ブルースは同情を求めない、媚びない、つるまない。
 音楽面でいえば、ブルースとは、すごく音楽的に優れていると再認識した。劇中で流れるスキップやJ.B.のあのギターの音色はどうだ。あの弾き様はどうだ。そして、あの声はどうだ。歌詞もストレートで素晴らしいけれど、なんといってもあの音楽がとてつもない。僕は、特にブルース愛好家ではないし、実はあまり好きではないけれど、あの音色と弾き様と声には圧倒されずにいられなかった。グワッと暴力的で高揚感に溢れ、かつデリケートでせつない。はっきり言ってブルースだどうだはどうでもよくなってくる。ただ、いい音楽に触れたということだ。それ以上でも以下でもない。

 バンバンバザールという楽団は、憂歌団をカバーすることからも分かる通りブルース好きの集まりだけれど、音楽がブルース的というわけではない。だが、どこを切ってもブルースが出て来る、ということは特筆すべきことかもしれない。バンバンバザールに限らず、優れた楽団、ミュージシャンは、テクノだろうが、ロックだろうが、ソウルだろうが、R&Bだろうが、ましてやポップスだろうが、ブルースが滲み出ているというのは面白い現象だ。この場合のブルースとはもはや7thだ、3コードだとかそういうモノではなく、「暴力的で高揚感に溢れ、かつデリケートでせつない」という想念の、便宜上の代名詞といったところだ。
 この映画はブルース生誕100年ということで、ブルース・ミュージシャンをフィーチャーしているが、結局、「音楽の根源的なパワー」というものを再確認させてくれる作品だ。ブルースをはじめ、まだまだ知らない過去の素敵な音楽すべてを聴きたいという欲望に駆られたし、現代の音楽もどん欲に聴き込みたいと思い直した。そして、自分で楽器を奏で歌いたいと強く思った。
 音楽の魅力を久々にリアルに感じた33歳の盛夏。まだまだ下腹部にぜい肉をつけている場合じゃない。今日から僕はシャドー・ボクシングを始めることにする。
 以下。あ、以上。

『ソウル・オブ・マン』
配給:日活
2003年/アメリカ/104分/ビスタ/DOLBY/日本語字幕:石田泰子
2004年8月28日、ヴァージンシネマズ六本木ヒルズほかにて公開。

by ichiro_ishikawa | 2004-08-18 03:12 | 音楽 | Comments(0)  

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