アトランティックR&B 後編(1960-72)

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ソウルの時代 スタックス&マッスル・ショールズ

 レイ・チャールズのメジャーABCパラマウントへの移籍、ビートルズを初めとするロックの台頭などを受け、ビジネス的にも目敏いアーテガンは、白人アーティストの獲得、育成に力を注ぎ出す。
 そんなアーティガンに対し、ウェクスラーは黒い音にこだわり続けた。メンフィスでカーラ・トーマスの「Cause I Love You」が流行っていることを知り、その制作レーベル、スタックスに近づき、全国配給の契約を申し出る。その後、同じく南部のマッスル・ショールズとも契約を交わし、ソウル・ミュージック全盛期を生み出す事になる。60年代アトランティックR&Bとは、イコール、スタックス、マッスル・ショールズR&B、ソウルである。

7.
「Green Onions」Booker T. & The MG's
(Jones-Dropper-Jackson-Steinberg 1962)

c0005419_1823335.jpgスタックスの録音のほとんどのバックバンドを務めたのが、ブッカー・T & The MG's(M.G.'sとはメンフィス・グループの略)で、その最初のヒット曲が、映画『さらば青春の光』でもお馴染みの「グリーン・オニオンズ」。メンバーはブッカー・T・ジョーンズ(key)、スティーヴ・クロッパー(g)、ドナルド“ダック”ダン(b)、アル・ジャクソン(dr)の白人黒人混成グループだ。


8.
「Mercy, Mercy」Don Covay
(Covay & Miller 1964)

c0005419_18241429.jpg 黒いミック・ジャガー、というか、ミック・ジャガーが強い影響を受けたのがこのドン・コヴェイ。コヴェイはアトランティックのソウル・シンガーたちに楽曲提供もしていたソングライターでもある。ローリング・ストーンズがカバーした「Mercy,Mercy」を筆頭に、スモール・フェイセズもカバーした「Take This Hurt Off Me」や、グルーヴィな「See-Saw」「Sookie Sookie」など傑作ぞろい。グルーヴィR&Bの最高峰。


9.
「I've Been Loving You Too Long」Otis Redding
(Redding & Butler1965)

c0005419_18244573.jpgスタックス最大のスターにして、ソウル・ミュージックというものの体現者、ソウルの代名詞とも言えるのがオーティス・レディング。26歳で航空機事故で急逝するまで、とんでもないソウルを連発した。ピーター・バラカンも言う通り、アップのノリの良さ、バラードの説得力、どれをとってもいう事なしだ。サム・クックと並ぶソウルの横綱。


10.
「When A Man Loves A Woman」Percy Sledge
(Lewis & Wright 1965)

c0005419_18251738.jpgスタックスと双璧を成す南部のR&B/ソウルレーベルがマッスル・ショールズのフェイムで、ダン・ペンやスプーナー・オールダムといった黒人大好き白人ミュージシャンを作家陣にもつ。誰もが知っているこの傑作ソウルバラードは、マッスル・ショールズ録音だが、1%のキックバックで経営者のリック・ホールがアトランティックからの発売にこぎ着け、南部にマッスル・ショールズありと知らしめた。


11.
「Land Of 1000 Dances」Wilson Pickett
(Kenner & Domino, Jr 1966)

c0005419_18255819.jpg不世出のソウル・シンガー、ウィルソン・ピケット。60年代初頭に数々のスター・シンガーを輩出した名門グループ、ファルコンズのリード・シンガーを務め、その後ソロに転向し、Double-Lでシングルを出した後、アトランティック入りした。当初はヒットに恵まれず、スタックスに詣で、「In The Midnight Hour」という傑作を生み出す。だが、ピケットとスタックスの面々は、性格的にソリが合わなかったらしく、ピケットはマッスル・ショールズへ出向く。そこで、Chris Kennerのいまいち冴えない曲をエキサイティングに仕上げたこの「ダンス天国」や、「634-5789」等の珠玉のミディアムなどを連発したのだった。


12.
「Soul Man」Sam & Dave
(Hayes & Porter 1967)

c0005419_18263326.jpg「これぞStax!!」なパワフル・ソウル・デュオ、サム&デイヴは、アトランティック側からスタックスに送り込まれた最強の刺客。高音担当のサム・ムーアは昨年新作をリリースし、ダイナマイトぶり健在!を見せつけた。この「魂男」のほか、「ちょっと待って、今行くから」など大ヒット曲多数。ディープ/サザン・ソウルを語る上で外せないデュオだ。また、サム&デイヴの曲は、映画『黒いジャガー(シャフト)』でお馴染みのアイザック・ヘイズと、デイヴィッド・ポーターが主に手掛けているという事も知っておく必要、大アリだ。


13.
「I Never Loved A Man (The Way I Love You)」(Ronnie Shannon 1967)
「Do Right Woman, Do Right Man」(Moman, Penn 1967)
Aretha Franklin

c0005419_1827161.jpg いわずもがなのソウル・クイーン、アリーサ・フランクリン。ゴスペルあがりのその歌唱は、まさにソウルフル。ものすげえ。アトランティックは66年に大手コロムビアから契約を買い取り、ウィルソン・ピケットに続いてこのアリーサをマッスル・ショールズに送り込んだ。マッスル・ショールズの田舎者の面々はアリーサなんて知らなかったが、黒人音楽フリークのダン・ペンは流石にアリーサに眼をつけており、仲間たちに「凄いのが来るから覚悟しとけよ」と言っていたという。アリーサはマッスル・ショールズで数曲傑作を残すが、現場のミュージシャンによる「アリーサのケツ触り事件」を機に、マッスル・ショールズを離れる。こうしたブラックミュージック裏話やスタックス、マッスル・ショールズ設立〜終焉までのストーリーは極めて面白い。それらは、「リズム&ブルーズの死」(ネルソン・ジョージ)、「スウィート・ソウル・ミュージック」(ピーター・ギュラルニック)、「魂(ソウル)の行方」(ピーター・バラカン)に詳しい。


14.
「Soul Finger」The Bar-Kays
(King-Jones-Cunningham-Caldwell-Alexander-Cauley-Christian 1967)

c0005419_18272965.jpg バーケイズの傑作パーティー・チューン「ソウル・フィンガー」。バーケイズは、スタックスのハウス・バンドとしてそのキャリアをスタートさせ、オーティス・レディングのバックなどで活躍していたが、67年12月9日、そのオーティスを乗せた航空機がマディソン州モンタナ湖に墜落。同乗していたバーケイズも6人中4人のメンバーを失った。ソウル史上、最悪の悲劇である。


15.
「Tighten Up」Archie Bell & The Drells
(Bell-Butler 1967)

c0005419_18275392.jpg Y.M.O.のカバーでもお馴染みの、フロア・クラッシックとして名高い名曲「ッタイヌナッ」。激烈にカッコいい。


16.
「Sweet Soul Music」Arthur Conley
(Conley, Redding, Cooke 1967)

c0005419_18282724.jpg オーティス・レディングによって見出されたシンガー、アーサー・コンリー。このオーティスのペンによるサザンソウルの名作「スウィート・ソウル・ミュージック」は、ワクワクさせられるイントロのホーンに始まり、熱いボーカル、タイトにビートを刻むバックの演奏と、全てが完璧。


17.
「The Ghetto」Donny Hathaway
(Hathaway-Hutson1969)

c0005419_18285217.jpg 60年代後半から70年代は、キング牧師の暗殺、公民権運動、泥沼化するベトナム戦争といった社会的な影響によって、ソウル・ミュージックが変容を遂げていった過渡期である。ノーザン・ソウルの雄、モータウンからはスティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイがシリアスな傑作を連発し、アトランティックからは、このドニー・ハサウェイがいわゆる“ニュー・ソウル"を発展させる。ジャズ上がりの知的さを備えるが、グルーヴィでフォンキィなリズム、ソウルフルなヴォーカル、随所で美しい旋律を奏でるエレピ、どれをとっても素晴らしい。


18.
「Clean Up Woman」Betty Wright
(Clarence Reid/Willie Clark 1971)

c0005419_18291439.jpg68年、若干13歳でデビューしたベティ・ゥライト。「ソウル・マン」風のこの「Clean Up Woman」、そして語りも良い「Tonight The Night」といった傑作も外せない。


19.
「Killing Me Softly With His Song」Roberta Flack
(Fox/Gimbel 1972)

c0005419_18293542.jpg ドニー・ハサウェイとの共演も素晴らしいロバータ・フラック。アリーサや、アーマ・トーマス、グラディス・ナイトといったソウルはないけれど、内省的で、ブルース/ジャズ/ゴスペル/フォーク/クラシックの要素を独自のクールな視点で昇華させたテイストは、すごくいい。


 この辺りを最後に、アトランティックのリズム&ブルーズ/ソウルは、死んでいく。それに取って代わるのが、アーテガンが押し進めて来たロック路線で、クリーム、エリック・クラプトン、イエスといったイギリス勢、バッファロー・スプリングィールド、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング、そしてレッド・ツェツッペリンでばく進し、遂にはローリング・ストーンズを獲得、『メインストリートのならず者』をリリースするのであった。

by ichiro_ishikawa | 2007-03-13 05:30 | 音楽 | Comments(0)  

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