最初のロックンロール・レコードは何か

 わけあって、最初のロックンロール・レコードは何かを検証しているが、一般的にはエルヴィス・プレスリーの初吹き込み「That's All Right」(1954)やビル・ヘイリーと彼のコメッツ「Rock Around The Clock」(1954)あたりを挙げる向きが多く、あるいは、黒人こそロックと居直る人は、チャック・ベリー「Maybellene」(1955)、リトル・リチャード「Tutti Frutti」(1955)、ボ・ディドリー「Bo Diddley」(1955)とするだろう。
 中にはもっとリズム&ブルースを掘り下げて、レイ・チャールズ「I've Got A Woman」(1954)と言ってしまう強引な人間も多いのには驚くが、ちょっと気の利いた奴は、エルヴィス以前のサンレコードにジャッキー・ブレンストンが吹き込んだ「Rocket 88」(1951)が嚆矢だと主張するやも知れぬ。また、ブルーズ愛好家の中ではロバート・ペットウェイ「Catfish Blues」(1941)をこそ最初のロックンロールと言ってはばからない人も多くいる。

 これは難問だ。まずロックンロールの定義があいまいだからだ。ブルーズにブギーのビートを取り入れてリズムを強化したリズム&ブルーズを白人がやればロックンロールと、ひとまずは言えるわけだが、前述の「Catfish Blues」やジョン・リー・フッカーの「Boogie Chillen」(1948)、マディ・ウォーターズ「Rollin' And Tumblin'」(1950)などのブルーズの圧倒的なリズムを前にすると、それをロックンロールと呼びたい衝動に駆られるし、烈しいシャウトということでは、ビッグ・ママ・ソーントンの「Hound Dog」(1953)など、すでにロックンロールなわけだ。ノベルティ要素が必須と考えるならば、スティック・マギーの「Drinkin' Wine Spo-Dee-O-Dee」(1949)、やはりジャンプが原点だということでは、ルイ・ジョーダン「Saturday Night Fish Fry」となる。
 もうこうなると、不毛な思索と思えてしまうわけだが、私は、やはり、それらの要素をすべて含め、プラス、きらめくギターとぶっといベース、そしてセクシャリティとかっけえツラ、これが揃って初めてロックンロールなのだと言いたい。となるとエルヴィス・プレスリー「Hound Dog」(1956)が、最初のロックンロールなのだった。それ以前のものは、エルヴィス自身も含めて、リズム&ブルーズだ。

Elvis Presley 「Hound Dog」(YouTube)
c0005419_17311959.jpg


「きらめくギターとぶっといベース、そしてセクシャリティとかっけえツラ、これが揃って初めてロックンロールなのだと言いたい」と締めくくったものの、やはり、違和感がある。いきなりツラとかを出してしまっては尚更だ。
 要は、黒人に憧れた白人が黒人のマネをしてR&Bをやったものがロックンロールだ、でいいような気がする。白人が黒人をやっても、どうしても白い音になってしまう。エルヴィス然り、ジョン・レノン然り、ポール・バターフィールド、ジョン・メイオール、ヤードバーズ、クリーム、そしてローリング・ストーンズ然り。だが、こう並べてみると、彼等こそロックンロールだと言えることが分かる。ということは、その白さこそがロックンロールということになる。この白さは純白ではない。黒く塗らんとした白さだ。この、ロックンロールをロックンロールたらしめている白さは、疾走感と言ってもいいかもしれない。前のめりな、走ってしまう感じ、福田和也が言うところの「バンド全体が立ち上がり、今すぐ駆け出そうとするような躍動感と、どこにも行く事は出来ないという焦燥が一体になった感触」(「日本人の目玉」より)だ。
 とすると、やはり最初のロックンロール・レコードは、エルヴィス・プレスリー「Hound Dog」と、結果的にはそうなる。

by ichiro_ishikawa | 2007-10-27 17:20 | 音楽 | Comments(2)  

Commented by mama at 2011-02-26 01:34 x
最初のロックンロールとは、シスター・ロゼッタの『up above my head』かな。
Commented by papa at 2011-02-26 02:05 x
最初のrockn'rollと呼ばれる曲はいろいろあるけど、RUTH BROWNの 歌いまわし、シャウト、リズム、バックバンド全てがrockしてrollしてる。
GOSPELがやはりRootsですな!
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

<< 古典礼賛 私家版・ユダヤ文化論 >>