buzzについて

昨日発売の『buzz』、ロック生誕50年特集。c0005419_14263144.jpg
 同社から先週出た『SIGHT』上での米誌『Rolling Stone』転載のロックベストアルバム特集に続く、ロック生誕50年特集なわけだけれど、今回の『buzz』では、“瞬間”という切り口で、特に現象面をフィーチャーしている。主に英『Q』誌の記事の翻訳転載だけれど、[ロックを変えた50の瞬間]では、各ディケイドごとに、ロッキング・オン社定番企画の編集部員の対談が載っていて、ここが一番面白かった。特に「70年代」は、社長・渋谷陽一と『rockin'on』『buzz』編集長の山崎洋一郎という顔合わせで、渋谷の批評家としてのすごさが垣間見れる内容だ。
 「60年代」で登場するのは松村雄策。基本的に「ビートルズ凄い、60年代最高、そのロックが一番輝いていた60年代を10代としてすごした俺は幸福だ」という路線は崩れていない。松村はやっぱりエッセイストで、純粋に音楽ファンなので、それはそれで信用できる。『rockin'on』の「渋松対談」が面白いのは、渋谷の批評が松村の純朴に逆に批評されることで、全体がより鋭敏な批評になっているからだと再認識した。
 で、渋谷だけれど、基本的に彼の魅力は、批評が自己証明になっているというまさに、小林秀雄流というところで、自ずと孤高的な立場になるし敵も多い。だが、彼は結局自分を語っているのでそこに気付かなければどんな敵も彼を倒すことはできない。
 彼の著書「音楽が終わった後に」「ロック微分法」「ロックはどうして時代から逃れられないか」などの著作や、『rockin'on』『SIGHT』などでの本文原稿を読むと、
やっぱり批評家として凄いと感じる。経営者としてものすごいので、批評家というより実業家としての側面にスポットが当てられがちだけれど、実は経営手腕の何千倍もその批評力が凄いと思っている。というより、その経営手腕自体が強靱な批評力によっている。例えば、後追いでなく自分のリアルタイムの実感で言えば、80年代末のヒップホップもそうだったし、90年代初頭のレディオヘッドをまず最初に「とんでもない」として評価したのは、(当時40代の)渋谷だった(あと田中宗一郎も)。
 今日は渾沌としているとか、価値が細分化・相対化しているとか、まことしやかに謳い挙げている輩は多いけれど、渾沌としていない時代なんてないし、価値はいつだって絶対的なもの。価値が相対的だったらそれは本当の意味で価値ではない。渋谷は、そういう地点から常にものを言っているから信用できる。やっぱり瑞々しい感性が生き生きとした尺度それ自体となっている。自分も常にこうでありたい。
 以下、余談。『buzz』は特集雑誌になってほしい。増井修が立ち上げた創刊時は『rockin'on』をリーディング雑誌として編集していくがゆえに、そこからこぼれ落ちてしまうオルタナティヴな要素を中心に構成していくというものだったと思う。表紙はトレント・レズナーでデザインも中島系統のものではなく英国のスタイリッシュなテクノ系の雑誌風であった。だが、メインストリームもオルタナティヴもないという昨今、そうした別け方で雑誌は作れないし、私はミュージシャンのインタビューなんて読みたくないので、その都度、いかした切り口で斬新な特集をムック的に見せていってほしい。

by ichiro_ishikawa | 2004-12-14 14:27 | 文学 | Comments(0)  

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