ザ・ドリフターズ

 ソウル概要の旅が終わったことは前に書いたけれど、今、深化に向かっている。ソウルを深化させると、まずポップに行き着いた。
 ソウルは、アメリカ深南部で生まれたブルースがヴキウギ系ジャズなどの影響でリズム的に強化されR&Bとなり、そこにゴスペル的な唱法が取り入れられ、そのスタイルができた。というのが、その成り立ちだが、ブルースやゴスペル関係を繙いていきたいという欲求がつのる一方で、R&B〜ソウルと相互に影響を及ぼしあっていたポップの世界をまず詳らかにしなければという必要というか、てめえに対する使命感を感じる。
 スタックス、アトランティック、マッスル・ショールズ(スタジオ?)、モータウンといったレーベルに代表されるソウル・ミュージックを聴いていて思うのは、そのベースとして確かにブルース、ゴスペル、R&B(レイ・チャールズなどにはジャズも)といったルーツ・ミュージックの気配を感じるけれど、やっぱり一番大きいのはポップではないかということだった。音楽の内容的形態にはさまざまなジャンルというか冠がかぶせられるが、ポップというのはジャンルではない。ブルース(たとえば7th系、AA'B形式)やジャズ(スウィング、テンションノート、ブルーノート、即興など)という音楽的形態を普遍的なレベルに昇華させる作用、これがポップなのではないかと思う。ただそれは、誰にでも楽しめるようにシュガーコーティングするということではなく、豊じょうで実験性に富んだ音楽を、音楽的教養の有無や感性の敏鈍にかかわらず、その胸にダイレクトに訴えかけさせる工夫であって、それは他者とのコミュニケーションの意志に裏打ちされており、他者とのコミュニケーションとは、つまるところ、てめえとの問答、自己を深く掘り下げる作業に他ならない。これに成功すること、つまりポップであることは、真の意味で究極の自己錬磨だ。

 ソウル前夜の50年代当時のポップスは、ニューヨーク・マンハッタンの28番通りの一角、ティン・パン・アレーがその主たる発信源だった。そこのブリル・ビルディングという所で、さまざまなポップ職人たちがさまざまなポップスをプロデュースしていた。その中でも、最近のお気に入りは、ザ・ドリフターズだ。ドリフターズといえばローリング・ストーンズが1stでカバーした「アンダー・ザ・ボードウォーク」などで名前を聞き齧ってはいたものの、そこから本家に辿っていくことがこれまでなぜかなかった。今さらながらその世界に入っている。
 代表曲の「Save The Last Dance For Me」は「ラストダンスを私に」という邦題だけれど、その日本語では語の外に含ませている「Save」という言い回しがすごくいい。「Save」で、目的語が「The Last dance」とは。
 昔のコーラスグループというのはリード・シンガーがコロコロ変わるのだけれど、ドリフターズで言えば、ベン・E・キング時代のものが特に気に入った。そして、キモは、ドリフターズにはジェリー・リーバーとマイク・ストーラーという名ソングライター・タッグがバックについている、ということだ。
 1959年にペン・E・キングがリードシンガーとして加入してからの1stシングルは、ペン・E・キング、ジョージ・トレッドウェル、ラヴァー・バターソンの共作で、リーバー&ストーラーのプロデュースによる「ゼア・ゴーズ・マイ・ペイビー」。このリーバー&ストーラーのプロデュース力が凄い。ペン・E・キング一流のハイトーンによるリードのバックで、グループは違うキーでコーラスをつけている。またバックで延々と鳴っている調子はずれのティンパニーがすごく変だ。そしてメロディアスながらちょっとひねくれたメロディ。そうしたちょっとねじれた感覚を実験的に取り入れながら、全体として非常に親しみやすくサウンドデザイする手腕。c0005419_2333757.jpgこれぞポップという、このポップミュージックの見本ともいえる楽曲をはじめとして、「トゥルー・ラヴ、トゥルー・ラヴ」「ダンス・ウイズ・ミー」、「デイス・マジック・モーメント」「ラスト・ダンスは私に」といったシングルが立続けに連打されたのだから、これは凄すぎる。いやがおうでも「おおリーバー&ストーラー!」と発語せざるを得ない。
 「ラスト・ダンスは私に」が発売された1960年暮れに、キングはドリフターズを脱退し、後に「スパニッシュ・ハーレム」をリリースするが、この曲もリーバー&ストーラーがプロデュースをし、さらに作曲にはリーバーに加えフィル・スペクターが参加している。この曲はアリーサ・フランクリンのカバーもあるが、やっぱり曲自体が凄いのだと再認識。
 その後キングがてめえ独りで作った「スタンド・パイ・ミー」は、言わずもがなジョン・レノンの『Rock'n'Roll』でもカバーされている名曲。この背後にリーバー&ストーラーやフィル・スペクターがいるかどうかは今はわからない(後で調べて更新する)。余談だが、フィル・スペクターといえばMr.mono、ウォール・オブ・サウンドであるが、最近、フィル・スペクターのアレンジが気にいらねえと言って新生『Let It Be』が生まれたり、当のフィル・スペクター自身が殺人罪で投獄されたりで、「あのとんでもない才能にすっかり逆風が吹いてるな」と、ジュリー・エレクトロのボーカル&ギター小林崇にインタビューしたところ、「というか、ステレオになった時からずっと逆風」と至極まっとうな答えが返ってきたことを今思い出して一人苦笑した。

 リーバー&ストーラー、あるいはジェリー・ゴフィン&キャロル・キングといった、50〜60年代、レノン&マッカートニー以前(または、その同時代)のソングライター・チームに今、とても興味が涌いている。バート・バカラック&ハル・デイヴィス、そしてその前にコール・ポーターやガーシュウィンもいるし、この辺はまだまだ深い。近々、ポップミュージック・クラシック特集を本サイトで展開しようと思っている。当然、大滝詠一や山下達郎に話は及ぶだろうし、ことによると布袋寅泰や中村一義、そしてバンバンバザールも登場するやもしれぬ。

by ichiro_ishikawa | 2004-12-15 20:32 | 音楽 | Comments(5)  

Commented by 牛角LOVE at 2004-12-15 20:53 x
キングの「スパニッシュ・ハーレム」とはマンハッタンの地名のことでしょうか。
Commented by セロリ解放区 at 2004-12-16 10:44 x
ポップミュージック・クラシック特集!?
Commented by acodigi at 2004-12-16 12:16
「ポップミュージック・クラシック特集」楽しみにしてます。またトラックバックさせてもらうやも。
Commented by a-karina at 2004-12-16 22:59
大滝詠一と内田裕也の日本語ロックをめぐる確執とか、触れるに価しないかね
Commented by ichiro_ishikawa at 2004-12-16 23:32
そこに及ばない保証はない。ただしメロディ/サウンドメイキングにスポットを当てるので、歌詞の世界や、言葉のメロディ/リズムへの乗せ方(ビートと日本語)みたいなことの思索は別の機会にするやもしれぬ。
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