親の恩 Part 2


おやのおん
尋常二年男 小林秀雄
 
 私のきものは、お母さんがこしらへてくださつたのです。学校へくるのは、お父さんやお母さんのかげです。うちでは、私はかはいがつてくださいます。このおんをわすれてはなりません。おんをかへすのには、お父さんやおかさんのいひつけをよく、きいておやにしんぱいをかけないやうにして、学校ではせんせいのおしへをまもるのです。それでおんはかいせるのです。

「明治四十三年度、各学年綴方優作集」(白金尋常小学校)
高見澤潤子『兄小林秀雄』(新潮社)所収


小二にして、この洞察力と迫力のある言い切り。とてつもない。

「男はまずてめえのかかぁを食わせることだ。天下国家を論じるのはその先だ」
小林秀雄がそう言っていたと知って以来、
「まずてめえのかかあを食わす」ということが俺の中で大命題になっているのだが、誰しもやっている事とは言え、これはすげえ大変だ。いまだ独身武士で、てめえ一人がなんとか食っていくだけでもヒーコラいっている。世の男、よくみんな黙ってこなしているな、と驚きの念を禁じえない。これじゃあ「無私の精神」とか述べる資格はないな。

 俺のファーザーは、文学とは無縁の男だが、生活力があった。かかあプラス、息子3人を食わした。俺は、家族との生活時代に貧乏を経験したことがない。漫画も雑誌も本もレコードもベッドもステレオもみんな買ってもらった。
 親は、その裏で実は高利貸しや親類から借金したり、俺の給食費を払う金が無い時は、パチンコで賄ったりしていた。当のかかあは週休1日で美容室に勤めながら家事を完璧にこなした。
 俺が文学とかロックとかのんきに言っていられたのは、2人のそうした屈強な生活力に支えられていたからだ。
 恩はいつか、かいさねばなるまい。

by ichiro_ishikawa | 2008-07-18 02:37 | 文学 | Comments(0)  

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