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2004年ベストアルバム15

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1.Delivery Man / Elvis Costello


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2.How to Dismantle an Atomic Bomb / U2


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3.Sonic Nurse / Sonic Youth


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4.Around the Sun / R.E.M.


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5.With the Lights Out / Nirvana


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6.You Are the Quarry / Morrissey


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7.To the 5 Boroughs / Beastie Boys


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8.Kasabian / Kasabian


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9.Franz Ferdinand / Franz Ferdinand


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10.22 / 22-20's


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11.Musicology / Prince


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12.Damage / Blues Explosion


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13.Encore / Eminem


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14.Over the Counter Culture / Ordinary Boys


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15.Always Outnumbered, Never Outgunned / The Prodigy



「聴いた回数÷入手してから経った日数」によって選出。モリッシーが意外と少なかった。エミネムはゲップの音がなければもっと上位に食い込んだはず。

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日本編・第1位:
『ALL NIGHT POTATO LONG』『夏はあきらめた』『BOOT Paint it Black』/ バンバンバザール

by ichiro_ishikawa | 2004-12-31 03:29 | 音楽 | Comments(2)  

en-taxi 最新号

 文芸誌『en-taxi』で、リリー・フランキーが連載している「東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜」。
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 現在発売中の最新号。
 オカンが胃がんを告知された。
 あの、明るく、強いオカンが、「もう、死にゃあええ……」と初めて弱音を吐くほど、
闘病に苦しんでいる。

 私は、そのオカン、リリー・ママンキーに一度だけ会ったことがある。
1995年夏、今は存在しない音楽雑誌の新米編集者だった私は、竹中直人の新宿リキッドルームでのライヴ(高橋幸宏プロデュースの『メルシィ・ボク』発売ライヴ)のリポートを企画し、その執筆をリリー・フランキーさんにお願いした。私は当時、雑誌『クロスビート』などでの文章や、TBSの深夜コント番組「マージナルマン」の構成などを通して、リリーさんを敬愛しており、竹中直人の笑いを文章で解説できるのは、リリーさん以外に誰がいよう、ということで、周囲の「誰それ?」、「というかなんで竹中直人?」という反論を全く意に介さず、かつ論理的に彼らを説得することもせず、ただ単に素人発想で勝手に企画を進め、お願いしたのだった。
 偶然にも社内デザイナーが武蔵野美術大学時代のリリーさんの後輩で、その人を通じて、すんなりと執筆の許可をいただくことができた。企画趣旨説明にはわざわざリリーさんが会社まで足を運んでくれた。私が、「竹中直人の笑いをズバリ文章で解説してほしい」と言うと、それじゃ面白くないから、竹中さんの笑いを全くわからない女子と一緒にライヴを観て、「えー、わかんなーい」とか言う女子をボクがブつ、というのはどうだろうという、さすがの提案を即答でしてきた。ぼくは大賛成で、そういう記事にまとめることで一致した。
 だが、当日、適当な女子が見つからなかったということで、例の「マージナルマン」出演者で、当時リリーさんがジャケットデザインやCDプロデュースを手掛けていた宍戸留美さんを連れてきた。そして、困ったことに宍戸さんは竹中さんの笑いを一発で分かってしまい、普通にライヴを楽しんでしまった(それもそのはず宍戸留美さんは竹中直人の笑いの集大成であるTBSの深夜バラエティ『東京イエローページ』の出演者だった)。見事、企画倒れとなったけれど、趣旨変更で、まあ普通にリリーさんがリポートすることになった。
 しかし、当時からリリーさんは、大遅筆家で、締め切りを大分すぎても一向に原稿があがってこない。電話も留守電だ。編集長からは白い目で見られ、「どうすんの」と挑発され、新人の私は、ほとほと弱った。そこで、名刺を頼りに、リリーさんの笹塚のマンションで待ち伏せることにした。この笹塚のマンションこそ、「東京タワー」の舞台である。私は、アイスクリームを手みやげに、そのマンションを訪れた。出迎えてくれたのは、リリー・ママンキー。そのときは、まさかお母さんがいるとは思わなんだ(なぜいるのかは「東京タワー」にすべてが書いてある)。リリー・ママンキー、“オカン”は、非常に人懐っこい当たりで、私を部屋に入れ、麦茶を出してくれた。どんな会話をしたかは非常に残念ながら覚えていないが、まだ大学生でこんな新人の編集者の私を、とんでもなく厚く、そしてフランクにもてなしてくれて、恐縮しきりだったことを記憶している。
 結局、本人には会えなかったが、本当に「オチる」寸前に、玉稿をいただいた。
 遅筆家だが、オトしたことはないと豪語する、その伝説は本当だった。

長くなってしまったけれど、「東京タワー」である。
そのオカンが、今、苦しんでいる。私は、居ても立ってもいられないのである。
面識があるので、余計に情が入り込んでいるのを否定はしない。
だが、それを差し引いても、この偉大なる、普遍的な「母」という存在を、ここまで生き生きと描ききっている作品を、私はほかに知らない。
今号では、オカンはまだ生きている。
リリーさんが生まれた当時から始まった連載も、「今」は、2001年ということもあり、おそらく、次号が最終回だろうと思う。
どうか、死なないでほしい、と切に願う。

 人はいつか死ぬ。絶対的な事実である。だが、私たちは、「死なないこともあるのではないか」と、実は本気で思っているのではないか。私は実は思っている。そうでなければ、今、生きられないではないか。

by ichiro_ishikawa | 2004-12-30 01:52 | 文学 | Comments(4)  

氷室京介 TOUR 2004 "SOUL STANDING BY〜"最終公演 国立代々木競技場第一体育館 2004年12月25日

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1.VIRUS  
(from『Follow the wind』2003)
2.Weekend Shuffle
(from『Follow the wind』2003)
3.Claudia
(from『Follow the wind』2003)
4.NATIVE STRANGER
(『I・DE・A』1997)
5.WILD AT NIGHT
(『HIGHER SELF 』1991)
6.FOOL MEN'S PARADE
(from『Follow the wind』2003)
7.MOON
(『HIGHER SELF 』1991)
8.DON'T SAY GOOD BYE
(B-side of the single「VIRGIN BEAT」1994, 『SHAKE THE FAKE』)
9.YOU'RE THE RIGHT
(B-side of the single「KISS ME」1992, 『MEMORIES OF BLUE』1993)
10.LOVER'S DAY
(B-side of the single「JEALOUSYを眠らせて」1990)
11.STAY
(『MISSING PIECE』1996)
12.Wild Romance
(single 2004)
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13.GONNA BE ROGUE?
(B-side of the single「Girls Be Glamourous」2001)
14.LOVE SHAKER
(from『Follow the wind』2003)
15.Girls Be Glamorous
(『beat haze odyssey』2000, single 2001)
16.To The Highway
(BOφWY『BOφWY』1985)
17.No! N.Y.
(BOφWY『Moral』1982)
18.Angel
(single 1988, 『FLOWERS FOR ALGERNON』1988)

encore
19.REVOLVER
(B-side of the single「Girls Be Glamorous」2001, 『Ballad 〜La Pluie』2001)
20.Still The One
(『MELLOW』2000)
21.ダイヤモンド・ダスト
(single 1999, 『MELLOW』2000)

encore 2
22.Only You
(BOφWY『Beat Emotion』1986)
23.ROXY
( 『FLOWERS FOR ALGERNON』1988)
24.TASTE OF MONEY
( 『FLOWERS FOR ALGERNON』1988)
25.KISS ME
(single 1992, 『MEMORIES OF BLUE』1993)

encore 3
26.BEAT SWEET
(BOφWY『Beat Emotion』1986)
27.RENDEZ-VOUS
(BOφWY『PSYCHOPATH』1987)

ハイライトは5回。
ひとつ目は、7.「MOON 」から「DON'T SAY GOOD BYE」、「YOU'RE THE RIGHT」、「LOVER'S DAY」のミドル・バラッド特集。この辺は、シンガー/ソングライターとしての面目躍如。今回は、シングルのB面に収録された曲が多かった。氷室は、A面でキャッチーさを追求し(ポップ・アーティストであることにこだわる氷室の誠意)、B面で、メロディ・メイカーとしての自分を追及している。氷室のソングライティング能力はB面にあり、だ。超一流のポップ・ソングである。

2つ目は、16.「To The Highway」、17.「No! N.Y.」の、BOφWY連打。特に、布袋の「No! N.Y.」をやったという。これがDVD化されれば、また作詞者・深沢和明(元BOφWY/現・俳優)に印税が入る。

3つ目は、encoreの『Mellow』特集・「REVOLVER」「Still The One」「ダイヤモンド・ダスト」。椅子セットで、じっくりと唱った。『Mellow』は「大人しめの曲ばかりを集めたアルバム」という表現を本人はしていて、ライヴではほとんど披露しないことになっていたので、ここで聴けたのは嬉しい。『Mellow』こそ、氷室がビート・シンガーを脱した=BOφWYの呪縛から完全に抜け出た金字塔である。「名詞代わり」という一連のシングルは、ある意味ノベルティ・タイプの曲であり、氷室が本当に一番やりたいのは、『Mellow』のような楽曲群なのであろう。こうしたバラッドでこそ氷室は真価を発揮する。

そして、encore 2のまさかの「Only You」、「KISS ME」。「Only You」はキーを下げていたため、今ひとつだったが、披露したというだけでそれは価値あることだ。

最後に、「本日の公演は終了しました」のアナウンスのあとに始まったencore 3。「BEAT SWEET」、「RENDEZ-VOUS」。もう氷室は、普通にBOφWYをやれるようになった。

氷室京介は、どこにも属さない、あの居方(いかた)がすごい。
今回は、マイクというかPAの質が高かったのか、ヴォーカリスト、氷室京介の最高のステージが観れた。
あのとんでもない声が、よりクリアに場内に響いたように感じた。
氷室の本質はやはり、あの声にある。
氷室ならたとえ電話帳の朗読会でも、俺は行く。
あのソウルフルで、セクシーで、激しく、切なく、哀しいヴォーカルは、実は、ジョン・レノン以上であるということに、ロックファン、特に洋楽ファンは気付いてもいい。あのファッションやステージアクション、音優先の歌詞、世界観、歌謡曲チックなメロディ、ポップチャートでの活躍、ビジュアル系なる日本の恥ずべきジャンルを作ってしまったこと、などなどは、まったく取るに足らない、氷室というミュージシャンのほんの尻尾の数々である。あの、圧倒的な声量と声域、低音のセクシーさ、ハイトーンの伸びと艶やかさ、精確な音程。そうしたシンガーとしての才能にこそ、おそらく氷室自身も最も自負する、氷室の本質がある。

by ichiro_ishikawa | 2004-12-26 00:07 | 音楽 | Comments(3)  

ビートルズが生まれた背景

ルーツ・ミュージックを繙いているうちに、
ビートルズが生まれた背景を、わかりやすく書いてみたくなったので、書く。

【まず、R&Bありき——ロックンロール前夜〜誕生 1950年代】

30年代にエレクトリックギター、40年代にエレクトリックベースが発明され、ブルースやブキウギをベースに強く烈しいビートを注入した黒人音楽R&Bが誕生。

この黒人のカッコいい音楽に、白人も飛びつき、「模倣」。
これがロックンロールとなった。

エルヴィス・プレスリー、バディ・ホリー、エディ・コクラン(以上、白人)
チャック・ベリー、リトル・リチャード、ボ・ディドリー、ファッツ・ドミノ(以上、黒人)
といった面々がシーンを担う。

一方、白人メジャー・シーンでは、ミュージカルや映画音楽の流れで、ティン・パン・アレーと呼ばれるニューヨークのブロードウェイの一角から生み出される甘いポップスが流行。

そんな中……

【ロックンロール、死す→ブリル・ビルディング・ポップス隆盛】

58年にエルヴィス・プレスリーが徴兵され、59年にバディ・ホリーが飛行機事故で死に、リトル・リチャードが飛行機事故で九死に一生を得たショックで宣教師に転向、60年にチャック・ベリーが投獄され、エディ・コクランが事故死。シーンを担ったロックンローラーたちは文字どおり、消えたのだった。

ロックンロールの火は一気に消沈した。

ここで勃興するのが、ティン・パン・アレーのポップス。
ただし、ロックンロールの洗礼を受け、これまでの毒にも薬にもならないポップスは、深みを増した形で新しく生まれ変わっていた。
当時のポップス製造所は、ブロードウェイ1619番地のブリル・ビルディングという所にひしめいたため、ブリル・ビルディング・サウンドと総称される。

プロデューサー
●ジェリー・リーバー&マイク・ストーラー
50年代から活躍。黒人R&Bに影響を受けた白人。ドリフターズ、コースターズほかを輩出。黒いポップスを創造。

●フィル・スペクター
リーバー&ストーラーの元で修行。偏執狂的資質から、音を重ねまくりウォール・オブ・サウンド(音の壁)と呼ばれるサウンド・デザインを構築。ロネッツ、クリスタルズほかを輩出。大滝詠一のルーツ。

作詞・作曲家コンビ
●ジェリー・ゴフィン&キャロル・キング
●バリー・マン&シンシア・ウェイル
●ニール・セダカ&ハワード・グリーンフィールド
●ジェフ・バリー&エリー・グリニッチ
●バート・バカラック&ハル・デイヴィッド

特徴は、やはり、R&BとR&Rの影響が強いこと。但し、大手レコード会社によるヒットチャート狙いなので、「ポップ」たることが主眼。R&B、R&R愛好家が、そうした外的制約を受けながら、創造したものが、このブリル・ビルディング・サウンドであり、その葛藤の結晶のなんと眩しいことよ。

そんな中、やはりイギリスやアイルランドでも、わかってる若者たちは、ブルーズ、R&Bに熱狂していた。つまり、イギリス版ブリル・ビルディング・サウンドが、ビートルズら港町リヴァプール・サウンド、ロンドンやブライトンのモッズであった。
ただし、直前というか同時に、アメリカでぼっ発したブリル・ビルディング・サウンドの「ポップネス」の洗礼を浴びていたということが大重要だと思う。
ブリルが、R&BやR&Rをまぶしたポップスだとすれば、
ブリティッシュ・サウンドは、ポップスのポップネスを昇華させたR&B、R&Rである。

要は、黒人と白人が何度も何度も交わってスパイラルに上昇していく過程で、大爆発を起こしたのがザ・ビートルズであった。

by ichiro_ishikawa | 2004-12-24 21:23 | 音楽 | Comments(0)  

秀雄ニュース

 新学社という出版社から「近代浪漫派文庫」というのが現在配本中で、その第38巻が、ロックンロールの権化・小林秀雄だという。配本日は未定。収録ナンバーは、

様々なる意匠/私小説論/思想と実生活/事変の新しさ/歴史と文学/当麻/無常といふこと/平家物語/徒然草/西行/実朝/モオツアルト/鉄斎/鉄斎の富士/蘇我馬子の墓/対談 古典をめぐりて(折口信夫)/還暦/感想

 小林秀雄は、デビュー作「様々なる意匠」(1929)でまず、そのてめえのスタンス——スタンスはないというスタンス、すべて否定すべて肯定、あるいは、一方に触れながら同時に対極にも触れていてかつ間を全部満たすというやり口——を表明した。それは、ここから続く途轍もない小林秀雄の歌の前書きのようなものでもあり、全著作を解く鍵となるのだから、絶対に外せないし、冒頭に収録されなければならない。そして、このラインナップはどうだ。タイトルを見るだけでもよだれがだらだら精神は高揚してくるだろう。
 「思想と実生活」は、トルストイが晩年に奥さんのヒステリーに悩まされて家出したという事実に対して、正宗白鳥が、あの高邁な思想を抱いたトルストイもやはり人間だ、みたいなことを言ったのに対し、ヒステリーに悩まされようが、家出しようがなんだというのだ、天才から凡人のような一面を見つけてほっとする心情のなんと醜いことよ、いくら尻尾がたくさん見つかろうが、それが尻尾では面白くない、トルストイの高邁な思想はその著作が証明するところであって、家出云々で揺らぐようなしろものではない、と書く。
 「事変の新しさ」は満州事変に始まる日本の戦時体制について空前絶後のコメントを残している。「そう!」と秀雄の鼻先に人さし指を突き付けたい衝動に駆られること、間違いない。
 「歴史と文学」は、タイトル通り歴史と文学について。秀雄のいう歴史は、歴史と聞いて多くの人が想像する「あれ」ではない。必読。
 「無常といふこと」は全文暗記必須の宝石。
 「平家物語」「徒然草」「西行」「実朝」と、一連の古典を繙く作業だが、これまで教科書で教養として知っていたそれぞれがグワッと覆されることだろう。例えば、鎌倉閑人エッセイとされる「徒然草」のイントロ「日々の由無しごとを筆の趣くまま書き連ねる」は、余計な力の抜けた達観ではなく、緊張しまくった烈しい精神の表明だ、と言う。基本的に、清盛なら清盛、兼好なら兼好の魂との交感が行われていて、すべての小林秀雄の批評がそうであるように、秀雄が対象を語るのではなく、秀雄は対象となり、対象は秀雄となって、歌が紡がれる。これらを読むと必ず、原典に向かいたい衝動に駆られるはずだ。批評とはそうしたものである。
 「モオツアルト」は大の音楽好きであった秀雄による、鋭敏な音楽評。音楽を言葉で語るとはこういうことなのだな。本サイト「ロックンロール・ブック」でやりたいのは、こういうことだ。
 その他、挙げても挙げてもきりがなく、いつか作品ごとに、本欄で丁寧に詳らかにしていきたい。まさにライフワーク。

 作品数が膨大で、かつ1つも駄作がないというのは、実にファン泣かせでもある。てめえオムニバスを作って、てめえなりの編集を施したい願望に駆られつつも、あれも入れたい、これは必須、これを入れるとなるとこれをどうして外せようなど、ノイローゼ気味になり、そしてふと、「あれ、この作業によってどこに行ける…?」と気付き、落ち込むことになる。優れたミュージシャン/バンドのオムニバス・エディッティド・バイ・てめえ、の作業によって、それは多くの人が実感していることであろう。だから、こういう場合は、例えば、オムニバス・タイトルの脚注として、いついつ現在と明記しておくことで回避するしかない。今回の文庫のように他者が勝手にやってくれると責任が自分にないので、肩の荷が下りて気楽に著者に面接することができて嬉しい。
 小林秀雄の考えること、考え方というのは、非常に清潔でストレートで、何の矛盾もない。よくみなとでは、やれ印象主義だ、逆説的だ、難解だ、などと囁かれているが、実は、何の矛盾もない。極めて明解。ただ、その批評文が、その考えの深さ、鋭さにより、究極の言葉は自ずと詩になってしまうように、散文詩として立ちあらわれるものだから、世の誤解が後を絶たないだけだ。c0005419_15595544.gif世間というのは正解した試しがないと小林秀雄は吐くが、常に世間と対峙し世間の「常識」から目をを逸らしたことは一度もない。余りにも人間的なところを、小林は常に見据えている。そこが小林秀雄が選民意識の強いアカデミズムから遠く離れたポップな存在でいて、かつ孤高の存在でありえる所以だ。小林秀雄は読んでも読んでもまったく飽きるということがない。また、どのページを開いても途途轍もない思索が充溢している。それは、まるでエヴァーグリーンなポップ・ミュージックのようであり、つまり普遍というやつなのだ。
 普遍などないと人はいう。だが、普遍と言うまさにそこに普遍があるではないか、とは小林秀雄と同じ精神を持つ池田晶子の言葉。
 今私は、普遍ということを噛み締めている。

by ichiro_ishikawa | 2004-12-21 14:13 | 文学 | Comments(1)  

ザ・ドリフターズ

 ソウル概要の旅が終わったことは前に書いたけれど、今、深化に向かっている。ソウルを深化させると、まずポップに行き着いた。
 ソウルは、アメリカ深南部で生まれたブルースがヴキウギ系ジャズなどの影響でリズム的に強化されR&Bとなり、そこにゴスペル的な唱法が取り入れられ、そのスタイルができた。というのが、その成り立ちだが、ブルースやゴスペル関係を繙いていきたいという欲求がつのる一方で、R&B〜ソウルと相互に影響を及ぼしあっていたポップの世界をまず詳らかにしなければという必要というか、てめえに対する使命感を感じる。
 スタックス、アトランティック、マッスル・ショールズ(スタジオ?)、モータウンといったレーベルに代表されるソウル・ミュージックを聴いていて思うのは、そのベースとして確かにブルース、ゴスペル、R&B(レイ・チャールズなどにはジャズも)といったルーツ・ミュージックの気配を感じるけれど、やっぱり一番大きいのはポップではないかということだった。音楽の内容的形態にはさまざまなジャンルというか冠がかぶせられるが、ポップというのはジャンルではない。ブルース(たとえば7th系、AA'B形式)やジャズ(スウィング、テンションノート、ブルーノート、即興など)という音楽的形態を普遍的なレベルに昇華させる作用、これがポップなのではないかと思う。ただそれは、誰にでも楽しめるようにシュガーコーティングするということではなく、豊じょうで実験性に富んだ音楽を、音楽的教養の有無や感性の敏鈍にかかわらず、その胸にダイレクトに訴えかけさせる工夫であって、それは他者とのコミュニケーションの意志に裏打ちされており、他者とのコミュニケーションとは、つまるところ、てめえとの問答、自己を深く掘り下げる作業に他ならない。これに成功すること、つまりポップであることは、真の意味で究極の自己錬磨だ。

 ソウル前夜の50年代当時のポップスは、ニューヨーク・マンハッタンの28番通りの一角、ティン・パン・アレーがその主たる発信源だった。そこのブリル・ビルディングという所で、さまざまなポップ職人たちがさまざまなポップスをプロデュースしていた。その中でも、最近のお気に入りは、ザ・ドリフターズだ。ドリフターズといえばローリング・ストーンズが1stでカバーした「アンダー・ザ・ボードウォーク」などで名前を聞き齧ってはいたものの、そこから本家に辿っていくことがこれまでなぜかなかった。今さらながらその世界に入っている。
 代表曲の「Save The Last Dance For Me」は「ラストダンスを私に」という邦題だけれど、その日本語では語の外に含ませている「Save」という言い回しがすごくいい。「Save」で、目的語が「The Last dance」とは。
 昔のコーラスグループというのはリード・シンガーがコロコロ変わるのだけれど、ドリフターズで言えば、ベン・E・キング時代のものが特に気に入った。そして、キモは、ドリフターズにはジェリー・リーバーとマイク・ストーラーという名ソングライター・タッグがバックについている、ということだ。
 1959年にペン・E・キングがリードシンガーとして加入してからの1stシングルは、ペン・E・キング、ジョージ・トレッドウェル、ラヴァー・バターソンの共作で、リーバー&ストーラーのプロデュースによる「ゼア・ゴーズ・マイ・ペイビー」。このリーバー&ストーラーのプロデュース力が凄い。ペン・E・キング一流のハイトーンによるリードのバックで、グループは違うキーでコーラスをつけている。またバックで延々と鳴っている調子はずれのティンパニーがすごく変だ。そしてメロディアスながらちょっとひねくれたメロディ。そうしたちょっとねじれた感覚を実験的に取り入れながら、全体として非常に親しみやすくサウンドデザイする手腕。c0005419_2333757.jpgこれぞポップという、このポップミュージックの見本ともいえる楽曲をはじめとして、「トゥルー・ラヴ、トゥルー・ラヴ」「ダンス・ウイズ・ミー」、「デイス・マジック・モーメント」「ラスト・ダンスは私に」といったシングルが立続けに連打されたのだから、これは凄すぎる。いやがおうでも「おおリーバー&ストーラー!」と発語せざるを得ない。
 「ラスト・ダンスは私に」が発売された1960年暮れに、キングはドリフターズを脱退し、後に「スパニッシュ・ハーレム」をリリースするが、この曲もリーバー&ストーラーがプロデュースをし、さらに作曲にはリーバーに加えフィル・スペクターが参加している。この曲はアリーサ・フランクリンのカバーもあるが、やっぱり曲自体が凄いのだと再認識。
 その後キングがてめえ独りで作った「スタンド・パイ・ミー」は、言わずもがなジョン・レノンの『Rock'n'Roll』でもカバーされている名曲。この背後にリーバー&ストーラーやフィル・スペクターがいるかどうかは今はわからない(後で調べて更新する)。余談だが、フィル・スペクターといえばMr.mono、ウォール・オブ・サウンドであるが、最近、フィル・スペクターのアレンジが気にいらねえと言って新生『Let It Be』が生まれたり、当のフィル・スペクター自身が殺人罪で投獄されたりで、「あのとんでもない才能にすっかり逆風が吹いてるな」と、ジュリー・エレクトロのボーカル&ギター小林崇にインタビューしたところ、「というか、ステレオになった時からずっと逆風」と至極まっとうな答えが返ってきたことを今思い出して一人苦笑した。

 リーバー&ストーラー、あるいはジェリー・ゴフィン&キャロル・キングといった、50〜60年代、レノン&マッカートニー以前(または、その同時代)のソングライター・チームに今、とても興味が涌いている。バート・バカラック&ハル・デイヴィス、そしてその前にコール・ポーターやガーシュウィンもいるし、この辺はまだまだ深い。近々、ポップミュージック・クラシック特集を本サイトで展開しようと思っている。当然、大滝詠一や山下達郎に話は及ぶだろうし、ことによると布袋寅泰や中村一義、そしてバンバンバザールも登場するやもしれぬ。

by ichiro_ishikawa | 2004-12-15 20:32 | 音楽 | Comments(5)  

buzzについて

昨日発売の『buzz』、ロック生誕50年特集。c0005419_14263144.jpg
 同社から先週出た『SIGHT』上での米誌『Rolling Stone』転載のロックベストアルバム特集に続く、ロック生誕50年特集なわけだけれど、今回の『buzz』では、“瞬間”という切り口で、特に現象面をフィーチャーしている。主に英『Q』誌の記事の翻訳転載だけれど、[ロックを変えた50の瞬間]では、各ディケイドごとに、ロッキング・オン社定番企画の編集部員の対談が載っていて、ここが一番面白かった。特に「70年代」は、社長・渋谷陽一と『rockin'on』『buzz』編集長の山崎洋一郎という顔合わせで、渋谷の批評家としてのすごさが垣間見れる内容だ。
 「60年代」で登場するのは松村雄策。基本的に「ビートルズ凄い、60年代最高、そのロックが一番輝いていた60年代を10代としてすごした俺は幸福だ」という路線は崩れていない。松村はやっぱりエッセイストで、純粋に音楽ファンなので、それはそれで信用できる。『rockin'on』の「渋松対談」が面白いのは、渋谷の批評が松村の純朴に逆に批評されることで、全体がより鋭敏な批評になっているからだと再認識した。
 で、渋谷だけれど、基本的に彼の魅力は、批評が自己証明になっているというまさに、小林秀雄流というところで、自ずと孤高的な立場になるし敵も多い。だが、彼は結局自分を語っているのでそこに気付かなければどんな敵も彼を倒すことはできない。
 彼の著書「音楽が終わった後に」「ロック微分法」「ロックはどうして時代から逃れられないか」などの著作や、『rockin'on』『SIGHT』などでの本文原稿を読むと、
やっぱり批評家として凄いと感じる。経営者としてものすごいので、批評家というより実業家としての側面にスポットが当てられがちだけれど、実は経営手腕の何千倍もその批評力が凄いと思っている。というより、その経営手腕自体が強靱な批評力によっている。例えば、後追いでなく自分のリアルタイムの実感で言えば、80年代末のヒップホップもそうだったし、90年代初頭のレディオヘッドをまず最初に「とんでもない」として評価したのは、(当時40代の)渋谷だった(あと田中宗一郎も)。
 今日は渾沌としているとか、価値が細分化・相対化しているとか、まことしやかに謳い挙げている輩は多いけれど、渾沌としていない時代なんてないし、価値はいつだって絶対的なもの。価値が相対的だったらそれは本当の意味で価値ではない。渋谷は、そういう地点から常にものを言っているから信用できる。やっぱり瑞々しい感性が生き生きとした尺度それ自体となっている。自分も常にこうでありたい。
 以下、余談。『buzz』は特集雑誌になってほしい。増井修が立ち上げた創刊時は『rockin'on』をリーディング雑誌として編集していくがゆえに、そこからこぼれ落ちてしまうオルタナティヴな要素を中心に構成していくというものだったと思う。表紙はトレント・レズナーでデザインも中島系統のものではなく英国のスタイリッシュなテクノ系の雑誌風であった。だが、メインストリームもオルタナティヴもないという昨今、そうした別け方で雑誌は作れないし、私はミュージシャンのインタビューなんて読みたくないので、その都度、いかした切り口で斬新な特集をムック的に見せていってほしい。

by ichiro_ishikawa | 2004-12-14 14:27 | 文学 | Comments(0)  

今朝知った今日発売の文庫を即買&即読、そしてUP

 今朝、平日は滅多に広げない朝刊に目を通すと、偶然ある本の広告に目が行った。
『R&Bコンプリート・CDガイド/松村雄策編』。ビートルズ愛好家・松村雄策が編したR&Bガイドだ。ビートルズ、ロックというと言わずもがなそのルーツにはブラックミュージックがあり、ロック愛好家なら誰しもブラックは通る道だけれど、“R&Bコンプリート・CDガイド”的なものを作る力量が松村に果たしてあるのか? 早速通勤途中で本屋に立ち寄り購入。さすがに朝刊の広告に載っている、しかも朝日文庫だとあって、すぐ見つかった。仕事の合間を縫って、今、読了。
 基本的に松村は監修的な位置。ほぼ時系列に沿って章立てされ、それぞれの章で執筆者がいる。松村は前書きと、第2章「ブリティッシュ・インヴェイジョン」を書いている。納得。あいかわらず松村の文はひょうひょうとしたエッセイ風で、常に言っていることがいつものように書かれている。だが、その他の章が実に読みごたえがあった。執筆陣がすごい。ロッキング・オン系のブラック番・高見展に、テクノのメジャー化の絶大なる貢献者にして元JAPAN編集長・鹿野淳、シンコー系(?)の赤岩和美、そして正統派・評論家の藤田正。松村の力は文章ではなく、このメンツ集めに注がれている。だから、編、だ。
 各章、5〜6ページの音楽概要があって、その後に推薦CDが並ぶ、という構成だが、概要の紙数が少ないだけにかなり濃い情報が凝縮されていて、かつ文章のクオリティが高いから、さながら、K−1のKOシーン特集、あるいは、サッカー・ゴール・シーン名場面、あるいはプロ野球ニュース「今日のホームラン」を見ているような感覚で、一気に読めた。
 50〜70年代のブラック・ミュージックはバーター・ピラカン『魂(ソウル)のゆくえ』に詳しく、最近読み返していたところなので、80年代以降〜現在に至るくだりが特に新鮮で良かった。自分はヒップホップにそんなに明るくないため、ネルソン・ジョージ『ヒップホップ・アメリカ』と併読しながら、ちょっとヒップホップの深淵に足を踏み入れてみようかという気分になった。また、取りこぼしている50〜70年代のブラックミュージックもさらにディープに入っていきたい。


『R&Bコンプリート・CDガイド/松村雄策編』
松村 雄策編
2004年12月10日発売 文庫判■204頁(朝日文庫)
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by ichiro_ishikawa | 2004-12-10 19:48 | 文学 | Comments(0)  

エルヴィス・コステロ LIVE at 新宿厚生年金会館 速報!

 思いきりシンコペーティヴなボーカルアレンジで決めた3rd『Armed Forces』のオープニングチューン「Accidents Will Happen」で始まり、「Radio, Radio」「Blame It On Cain」「(I Don't Want To Go To) Chelsea」といった初期、70年代の曲から、「High Fidelity」、「Blood & Chocolate」といった中期、そして「13 Steps Lead Down」、「Sulky Girl」といった90年代のナンバー、そして最新作からは「Country Darkness」「Either Side Of The Same Town」、オーディエンスとのコール&レスポンスとなった「Monkey To Man」「The Delivery Man」「Bedlam」「Nothing Clings Like Ivy」、そして必殺の「There's A Story In Your Voice」を披露。普通、長いキャリアのミュージシャンは、初期〜中期あたりが最盛期で、ライヴでもその辺寄りの選曲を期待してしまうものだが、ことコスキヨに限っては、新作を聴きたいと思う。なぜなら常に最新作が最高傑作だから。時の経過によって全体を俯瞰する目を獲得してからはそれが最高かどうか変化はするが、少なくとも発売から1年間は最高傑作であり続ける。これはすごいことだ。だから、今回も新作からの曲を期待した。
 終始、ハイライトだったが、とりわけアカペラで始まった「I Can't Stand Up For Falling Down」ラスト「(What's So Funny 'bout) Peace, Love & Understanding」がヤバかった。「平和と愛と相互理解について歌って何がおかしい?」というポップ・ソングは、シニカルな傍観主義や、無反省な現状肯定主義、夢想に過ぎない理想主義などすべての意匠を疑ってみせる、エルヴィス・コステロというミュージシャンの核心だ。今回のライヴ、惜しむらくは、「Accidents〜」以降『Armed Forces』からの曲が1曲もなかったこと、アンコールが1回だけだったこと、永遠の第1位「Alison」「Everyday I Write The Book」「Pump It Up」をやってくれなかったことだ。まあ、名曲が200曲ぐらいあるからどうやったって2時間のライブではそうした不満は出るのだけれど。やっぱりコスキヨの場合、全公演を網羅するしかないな。

 来週の金曜には元ジ・アトラクションズにして現ジ・インポスターズのスティーヴ・ナイーヴが青山CAYでソロ・ライヴをやるとの知らせが。行くしかない。また、ソニック・ユースが3月にやってくるとは初耳。しかも日程がR.E.M.とドかぶり! ちなみに、ダン・ヒックス&ザ・ホット・リックスも2月に来日する。05年は、早々からライブ三昧にならざるを得ない。

コステロのいいwebsite

by ichiro_ishikawa | 2004-12-09 00:16 | 音楽 | Comments(3)  

休日のキャッチ−な買い物

ダブルポイント最終日のタワーで新作3点買い

●ニルヴァーナ「ニルヴァーナ・ボックス〜ウィズ・ザ・ライツ・アウト」
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●U2「ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム」
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●エミネム「アンコール」
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by ichiro_ishikawa | 2004-12-06 23:57 | 音楽 | Comments(0)