La Tristesse Durera(Scream To A Sigh)

 呑気に「お笑いベスト5」なぞ書いている中、池田晶子のご尊父が亡くなられていた。
 それは「週刊新潮」最新号にて、伝えられた。
「親子ジグザグ」でババアが死んでしまったとき、「en-taxi」でオカンの死に立ち会ってしまったときと、その哀しみの深度は同じであった。
 だが今回の知らせは、あまりにも唐突だった。ババアやオカンのときのように、死ぬなと祈る事さえ叶わなかった。コンビニなんかで知らされるなんて何か申し訳なく、普段は立ち読みで済ますが、この時ばかりは購入し、家に持ち帰り、書斎に籠って、ゼロから読み返した。感傷的なことを書いて恐縮だが、泣いた。
 「父」のことは、彼女の文章にしばしば登場していたから、よく知っていた。まあ、文を書かない小林秀雄、みたいな人だと思っていた。「ご苦労様でした」というそのタイトルに、クワッとして、頭がガンガン熱くなった。

 常に「死は、ない」という池田晶子、父の死に何を思う。
 
 文章は、いつもどおり切れ味鋭く、覚悟の違いを見せつけている。哀しいなんて言わない。
 ただ、「辛いなあ」という。まるで「寒いなあ」のトーンで。だが、この一言に、全てが見えた。彼女は深く哀しんでいる。その哀しみは俺なんぞに分かりようもなく、深く、暗い。

 何で人生は、かくも辛いのか。俺は池田さんをその場で抱きしめてやりたかったから、今これを書いている。

# by ichiro_ishikawa | 2006-12-07 01:37 | 文学 | Comments(0)  

すげえお笑い、ベスト5

 こう見えても(どう見えてる?)俺はお笑いが大好きで、お笑いは、音楽、文学、映画に並ぶ4大趣味であると同時に、“笑わせる”ことで食っている「芸人」は、“ボールを思いっきり投げる”ことで食っている「左腕」、“歌う”ことで食っている「歌手」と並ぶ、憧れの3大職業の1つなわけだ。
 常に、どいつが一番おもしろいか、に目を光らせているし、テレビや映画、本などでの秀逸なギャグは無論、日常生活における誰かのギャグ、みたいなものも、イタリアのカーフ革製のノートに、モンブランのマイスターシュトックの細字で、「秀逸ギャグ覚え書き」としてメモを残している次第だ。
 基本的には、一筋縄ではいかないシュール(レアリスティック・ピロー)なものを好むが、ベタなギャフン・ギャグも否定はしないし、「ははーん」とうなってしまうような、安心して見られる/聞ける、古典的名人芸のようなものも嫌いじゃない。そういう意味では間口は広い。

なにはともあれ、「ロックとは、つまるところ、ユーモアだ」
 by アクション俳優・銃(がん)すぐる
というわけで、すげえお笑いベスト5。


9.夕やけニャンニャン(タイマンテレフォン、ボブに挑戦)
c0005419_3085.jpgTV。85年4月〜87年・フジテレビ系。
今観たらそんなに面白くないやも知れぬが、素人をぶっとばす石橋が最高。

8.まんがチョップ'84
c0005419_31446.jpgTV。'84年4月〜9月・フジテレビ系。定時前の5分番組。週3回の変則オンエア。 前年にシャネルズから改名したラッツ&スターが「大森笑劇研究会」の名義で出演。舞台の基本設定は就寝時間を迎えたタコ部屋で、8人が布団に潜った状態でテンションの低い雑談を展開する。

7.スネークマン・ショー
c0005419_312528.jpgラジオ/CD。桑原茂一率いるコントユニット。主なメンバーに咲坂守こと小林克也、畠山桃内こと伊武雅刀。代表作に「ジャンキー大山ショー」「急いで口で吸え」など多数。

6.マージナルマン
c0005419_314542.jpgTV。91年4月〜7月・TBS。リリー・フランキーが構成作家を務め、ユリ・サリバンとして出演もしていた深夜のコント番組。他の出演者に、加藤賢崇、宍戸留美、ヒロ荒井(キツイ奴ら)。

5.とんねるずのオールナイトニッポン
c0005419_32969.jpgラジオ。85年10月~92年10月・ニッポン放送。「なんでもベスト5」「ばばあの知恵」(うちのばばあは、自転車ですれ違う時いちいち降りる/うちのばばあは、クソするとき泣く/うちのばばあのむいたりんごは味が変、など)等の、リスナー投稿が秀逸。とんねるずのキャリアの最高峰。「コラーッ!とんねるず」(85年〜89年・日本テレビ)もすげえ。画像は「オールナイトフジ(初登場)」

4.システムキッチン(visualbum/松本人志)
c0005419_343764.jpgビデオ作品。95年。松本と浜田の頂点。板尾が冴える「古賀」も傑作。「ガキ使」は言わずもがな。

3.恋のバカンス
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TV。94年・TBS。ナン男、チャーリー・ボブ彦、ボン梶本、とっくりブラザーズなど名キャラクターを生んだ竹中直人の笑いの集大成。

2.Mr.Boo!シリーズ全部
c0005419_35164.jpg映画。70〜80年。マイケル、リッキー、サミュエルのホイ3兄弟による香港コメディ。広川太一郎の吹き替えも秀逸。サミュエルによる各テーマ曲はビートルズ(ポール寄り)ばり。

1.東京イエローページ
c0005419_35329.jpgTV。89年10月〜90年9月・TBS。サラリーマンコント、家族コント、クイズコントといった名作がズラリ並んだ竹中直人の笑いの集大成。



補遺:これこれも相当おもしれえ。
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# by ichiro_ishikawa | 2006-12-06 02:12 | 日々の泡 | Comments(1)  

ここは地の果てアルジェリア 


 サザン「みんなのうた」を、車両ナンバー893のベンツのカーステでノリノリでかける舎弟の運転手つね(哀川翔)に、
「消せ。そんな日本人なめくさったような歌、消せ」
 小川英二(長渕)は、後部座席でふんぞり返りながらそう吐き捨てると、
「ここ~は地の果て アルジェ~リア どう~せカスバの 夜に~咲く」と鼻歌を歌いだす。
 それが抜群のメロディで、歌詞も強烈だった。
 鼻歌でも食えるのが長渕という歌手だ。

 その『とんぼ』(88年、TBS系)以来、この曲が何という曲かは知らないまま、己が心の奥底で静かに眠っていたのだが、近年のITの発達で、覚めた。原曲及び楽曲詳細を易々と入手することができたのだ。現在、iTunesとiPodのヘビーローテーションとなっている。ちなみにYouTubeでは、上述のシーンもUPされている。
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           『とんぼ』より(from YouTube)


 小川英二の鼻歌により、現代によみがえったこの曲は、「カスバの女」。昭和30年(1955)、芸術プロの映画『深夜の女』の主題歌として作られた。宇多田ヒカルの母親・藤圭子も歌っており、『新宿の女』に収録されている。
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      「カスバの女」
      大高ひさお作詞・久我山明作曲
      唄:エト邦枝

      涙じゃないのよ 浮気な雨に
      ちょっぴりこの頬 濡らしただけさ
      ここは地の果て アルジェリヤ
      どうせカスバの 夜に咲く
      酒場の女の うす情け

      唄ってあげましょ 女(わたし)でよけりゃ
      セイヌのたそがれ 瞼(まぶた)の都
      花はマロニエ シャンゼリゼ
      赤い風車の 踊り子の
      今更(いまさら)かえらぬ 身の上を

      貴方も女(わたし)も 買われた命
      恋してみたとて 一夜の火花
      明日はチュニスか モロッコか
      泣いて手をふる うしろ影
      外人部隊の 白い服

# by ichiro_ishikawa | 2006-11-28 15:47 | 音楽 | Comments(0)  

マハトマ・ガンジー、かく語りき

「言って分からねえ奴は殴れ」
確かガンジーもそう言っていた。

 前回、そう書いたことには、2つの思惑があった。
 
 1つは、知っての通り「非暴力」主義を貫いたマハトマ・ガンジー(1869-1948)にそう言わせる事による、「非暴力」主義と、イジメっ子ヘの鉄拳制裁は、矛盾するものではない、という逆説的真理の提示。
 1つは、「非暴力」主義のガンジーにこそ、そう言ってほしいという願い。
 いずれにせよ、事実無根で書いた。

 ところが、実際にそう言っていたという事実が、一昨日判明した。

「ガンジーにたいして、ある人がその非暴力の教えは、例えば家に強盗が押し入って父親が殺されそうな時も貫かねばならないのか、と尋ねました。ガンジーはそんなバカなことはない、と答えたのです。彼は、そこに棒があったなら、棒で戦え、包丁があったなら包丁で戦え、鉄砲があったなら鉄砲で戦え、『非暴力』は『卑怯』とはまったく違うのだ、と教えました」
(「続・なぜ日本人はかくも幼稚になったのか」福田和也/1997年)

 福田は出典を明らかにしていないが、ブログなんかとは違い公に本になっているということは、幾人もの良識ある人の検閲を経ていて裏は取れているはずなので、おそらく事実だろう。よしんば、そうでないとしても、非暴力について徹底的に考えた人だったら、そう言うことは当たり前なので構わない。
 空調の効いた部屋で、空論を弄んでいる輩に限って、「体罰はいけない」だの、「戦争反対」だの、うるさい。寝言は寝ながら、馬鹿は休み休み言ってもらわなければ迷惑だ。「戦争反対」なんて当たり前じゃないか。

# by ichiro_ishikawa | 2006-11-28 01:12 | 日々の泡 | Comments(0)  

いじめられている君へ

「いじめで自殺」が横行している。
ここ最近、朝日が「いじめられている君へ」というタイトルのもと、各界の識者の寄稿を一面に載せている。たいてい、こういうのは全然ダメなものだが、鴻上尚史という輩の寄稿は、輪を掛けてダメだった。
骨子は「逃げて逃げて」。
822万人もの人々にそんな寝言をぶってどうするか。
逃げてどうするか。

逃げるのがいけない、と言いたいわけではない。ましてや、逃げるな、立ち向かえなどと根性論を振りかざすつもりも毛頭ない。
逃げ場などない、ということをすっかり見落としているところが、寝言なのだ。

「死んでもいじめたやつらは反省しません」というのは当たり。
「この世の中はあなたが思うより、ずっと広いのです」という。それもそうだ。
でも、どこに逃げたって根本が変わらなきゃ、同じ事。
行く先々でいじめられること請け合いだ。
引き蘢って恨み節抱いても、性格が悪くなるだけ。そうなったら大人になったときいよいよ本格的に不幸というもの。
実際、逃げるってどこに? 
実は逃げる「場所」なんてない。
いや、実はあるのだが、それは鴻上の言う「広い世界」の中に、だ。
だがその「広い世界」という概念は、成熟して大人にならないと、実は持ち得ないのだ。
そんな場所を見つけられる様な気の利いたガキだったら、そも、いじめられてなんかいない。
普通、子供の視野なんて半径3mだから、その世界が全世界。
大人になれば、自然に「広い世界」に出られるかもしれないが、子供の一日は長いからね。
大人になるまでの間イジメられ続けるなんて地獄の苦しみだろう。
そりゃ死んだ方がましだってなるわな。

鴻上は、一見子供の立場にリアルに立っている様に見えて、実は、大人お得意のいつもの机上の空論を弄しているにすぎない。「空疎」の単なる新しいヴァリエーション。
とは言え、朝日の読者の99%はブタ野郎だから、「お、さすが鴻上、良いこというねえ」みたいな事になりかねない。そうなると当事者が可愛そうだから、柄ではないが、俺もヘラルド・トリビューンに寄稿して一席ぶちたい。

だいたい小中学校なんてところは、未開人ばかりのゲリラ地域みたいなもんで、
拳がモノを言う、まさに弱肉強食の世界。
未開人に論理や理性は通用しない。
So、
「いじめる奴の顔面にストレートをぶち込め」
ジャブでもいい。
肘を脇から離さぬ心構えで、やや内側を狙いえぐりこむように打つべし。
まあいじめられるお前の事、きっと腕力はねえから、
返り討ちでぼこぼこにされるだろう。
でもちょっと我慢すれば、誰かが止めに入る。死にはしない。
よしんば死んだとて、もともと死のうとしていたのだから文句あるまい。
ただ、もう、いじめられる事はなくなる。
それしか方法は絶対に無い。
あ、ギターを燃やす、というのも手やもしれぬ。

古い考え? 単純? 非現実的?
健全な常識だと思うのだが。
「言って分からねえ奴は殴れ」
確かガンジーもそう言っていた。

# by ichiro_ishikawa | 2006-11-19 05:23 | 日々の泡 | Comments(0)  

バンバンバザール meets サム・ムーア

Nack5 79.5FMでのバンバンバザールのレイディオ番組
「GOO GOO RADIO」
11/21(火)放送分にて、
「ちょっと待って、今行くから」「魂男」などのヒット曲でおなじみ、
現在ブルーノート東京公演中の元サム&デイヴ、
サム・ムーア(高音担当)がゲストで登場!
(バンバンバザールHPのBBSより)
必聴!!

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(左)サム&デイヴ。いい目線。
(右)サム(高音担当)が70歳にして放ったソロ最新作『Overnight Sansational』は、スティーヴ・ウィンウッド、エリック・クラプトン、ビリー・プレストン、スティングら豪華なメンツが参加。1曲目アン・ピーブルズのカヴァー「I Can't Stand The Rain」は、今は亡きビリー・プレストンの生前最後の演奏らしい

ブルース・ブラザーズ(ジョン・ベルーシとダン・アイクロイド)
による「Soul Man」(from You Tube)も必見

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このダンス、マスターしてえ

# by ichiro_ishikawa | 2006-11-15 00:57 | 音楽 | Comments(3)  

吉川晃司私論2・今の吉川

 吉川晃司が「おもしれえ物体」として、いじられ始めた昨今。
 その最たる物、最終形と思われるのが、このPVだ。

「Juicy Jungle feat.吉川晃司」
Disco Twins (YouTube)

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 昔(84~96)、吉川は、普通にすげえカッコ良かったが、ワンセグでweb2.0な上、iTunes7.0な21世紀においては、「ベタなアクション歌手」として捉えられている節がある。
 手足をくねくね痙攣させたり、打点の高いローリングソバットで特設シンバルを蹴り上げたりといったステージング、「タ・テ・ト」→「ツァ・ツェ・ツォ」などの英語風日本語歌唱、「濡れたままの唇で Smack for good night」「エスプリックな眼差しに プリマドンナ夢中なのサ 」「最初からベイビー・イッツ・オーライ」「濡れたままの唇でジョーゼット」などの発語して気持ちいい優先の英語交じり歌詞、グラサンに派手なスーツといったルックス。90年代においてダサさの象徴だったこれらが、今は「笑い」の対象へと変じた。
 吉川は、笑い飛ばされるまでに、熟したということだ。
 悪くない。
 「それでも“ロック”な、吉川はすげえ」、との感嘆の念を禁じ得ない。
 ただ、上述した吉川の要素は、誰にも真似できねえ(したくないでも同じこと)ことだと気づくのは良い事だ。

# by ichiro_ishikawa | 2006-11-09 14:48 | 音楽 | Comments(0)  

吾妻光良 vs 福島康之

吾妻光良Session
@東京・高円寺 JIROKICHI
吾妻光良vo,g、牧裕b、早崎詩生pf、福島康之vo,g、平林義晴dr

 牧裕と早崎詩生は、スウィンギング・バッパーズ、平林義晴はカンザス・シティ・バンドのメンバー。JIROKICHIは、金子マリや妹尾隆一郎、あるいは野獣王国(是方博邦g 難波弘之key 鳴瀬喜博b 小森啓資dr)といった、ブルーズ、ジャズ系のミュージシャンが演る店、since 1974だ。壁には、キング・カーティスやアリーサ・フランクリンらの後ろでタイトでグルーヴィなリズムを奏でた超売れっ子セッションドラマー、バーナード・パーディのサイン入り写真も。バンバンバザールのライヴ盤『ハイライト』は、ここで、この吾妻光良や、友部正人を迎えて行なった1999年のライブを収録したものだ。

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 吾妻はサイドをショートカットに

 バンバンバザールのナンバーからは「こんにちは」「風呂屋」「夏だったのかなぁ」「4時間座っていたけれど」「恋はねずみ色」「ほんじゃね」(吾妻光良& The Swingin' Boppersによる外国曲のカバーのカバー)、「明るい表通りで」(カバー曲)、そして! “ジャイヴ・ミュージックが好きです”との福島康之のMC、吾妻光良の“当然だ”という返しで始まった「盛り場に出て行こう」が披露された。“コロッケそば!!”は聞かれなかったものの、名盤『ハイライト』のあの名演再び!!、となった。この曲での吾妻光良のコーラス(しゃがれたハイトーンでのハモリとシンコペーション)は、本当にすげえいい。
 福島康之が初めて作った曲が「2丁目の垣根の曲がり角」だというのは有名だが、2番目が「風呂屋」、3番目が「どういうこと」、4番目が「盛り場に出て行こう」だということが、この晩、判明した。
 
 また、本棚の下に敷く5cm角程度のベニヤ板という恐ろしく地味な買い物をしに吉祥寺に出た時に、ロンロン前で路上ライブをやっていたバンバンバザールに初めて出会った、というエピソードの掘り返しも聞けた。「くしゃくしゃの1000円札をくれた」「いや5000円だよ」「1000円です!」といったテンポのいい舌戦も冴えていた。

 福島康之の、こういう立ち位置での、ライブは、本当にいい。
 それにしても、第一声で、グワッと空気を作ってしまう、福島康之のヴォーカルは凄まじい。

# by ichiro_ishikawa | 2006-10-29 03:36 | 音楽 | Comments(1)  

池田晶子 最新作リリース

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 池田晶子の新作が出た。「週刊新潮」での連載エッセイ「人間自身」をまとめたもので、そのシリーズ第3弾となる。タイトルが、
「知ることより考えること」。
 ここでの「知る」は、「情報を得る」という意味だ。つまり、この情報過多のネット社会やらなんやらでいろいろと知識を増やすのはいいが、本当に大事なものは何だ? それを見極める目を持て。
 要するに、己が頭で(手ぶらで)考える、ということをせんでは、何をしたことにもならないぜ、という意味が込められている。
 池田晶子は、常々「考える」ということの重要性を述べているが、この「考える」という言葉の深い意味に注意するのは良いことだ。
 小林秀雄は言う。

 「考える」は、「かんがふ」で、「かむかう」の音便だから、もともとは「迎える」という言葉だ。
 「彼(か)」を「迎える」で、つまり、考える主体である「私」と考えられる「モノ」とが、相対するということだ。
 さらに「むかふ」の「む」は「身」であり、「かふ」は「交ふ」である。
 
 つまり、小林秀雄および本居宣長が、手ぶらで、てめえの頭で、自己流にグワッと思索したところによれば、

 「考える」とは、物に対する単に知的な働きではなく、物と親身に交わることだ。物を外から知るのではなく、物を身に感じて生きる、そういう経験を言う。
(62年「考えるといふこと」小林秀雄)

 池田晶子の「考える」は、この「考える」なのだと思う。

# by ichiro_ishikawa | 2006-10-27 16:15 | 文学 | Comments(0)  

グレン・ティルブルック来日公演速報

グレン・ティルブルック来日公演
2006年10月14日(土)東京・南青山マンダラ

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 グレン・ティルブルックと言ったって、おそらく誰も知らないだろうし、スクイーズのギター&ヴォーカル、とその出自を説明したところで、そもスクイーズとは? ということになろう。
 これは本当に残念な事だ。グレン・ティルブルックが、スクイーズがあまり世に知られていないという事が残念なのではない。スクイーズとは?と愚鈍に訊いてしまう、その、スキだらけのあなたの人生が、残念でならない。

 グレン・ティルブルックは、元スクイーズのギター&ヴォーカル。
 スクイーズとは、78年に『Squeeze』でデビューしたイギリスのバンドで、音楽的には、ポール・マッカトニー寄りのザ・ビートルズ、ザ・キンクス、エルヴィス・コステロ、XTC、クラウデッド・ハウスに近い。伝統的な英国ギターポップに、ニューウェーヴのエスプリが利いた、知的な大人のポップバンドだ。
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      1982年のスクイーズ。中央がグレン・ティルブルック

 なんと言っても、クリス・ディフォードの作詞と、グレンの作曲によるソングライティング、そしてグレンのヴォーカルが秀逸なバンドだ。要するに、2枚看板で、これは、レノン&マッカートニー(ザ・ビートルズ)、ジャガー&リチャーズ(ザ・ローリング・ストーンズ)、レイ&デイヴのデイヴィス兄弟(ザ・キンクス)、モリッシー&マー(ザ・スミス)、アンダースン&バトラー(スウェード)、リアム&ノエルのギャラガー兄弟(オエイシス)と続く、英国2枚看板バンドの系譜に連なり、その中でも、トップクラス、つまり、レノン&マッカートニー(ザ・ビートルズ)に並ぶ、と言っても、イギリス人だったら「Definitely」、あるいは「Absolutely」と、うなずくはずだ。

 ただし、グレンは作曲とギター、ヴォーカルだから、作詞もするレノンやマッカートニー、レイとは違うし、基本的には歌唄いのジャガー、モリッシー、アンダースン、リアム、ギター弾きのリチャーズ、マー、ノエルとも異なる。
 そういう意味では、歌を歌ってメインギターも弾く、ジェームス・ディーン・ブラッドフィールド(マニック・ストリート・プリーチャーズ)、ポール・ウェラー(ザ・ジャム〜スタイル・カウンシル〜ソロ)寄りだ。
 つまり簡単に言えば、シンガー・ソングライター寄りだ。とはいえ、詩を書かないから、正確には、「主義主調の無い、流しのミュージシャン」といった方がいい。

 そんなグレンが、東京に流しに来た、といった感じのギグだった。
 青山の「マンダラ」という渋いハコで、モンティ・パイソンを彷彿させる、英国ギャグ満載のマシンガントーク&アクションを随所に挟みながら、矢継ぎ早に曲を繰り出していく。40曲ぐらい演ったのではないか。
 自作曲以外では、ジミ・ヘンドリックス「Voodoo Chile」(物まね付き)、ザ・キンクスの「Sunny Afternoon」を轟かせた。驚きだ。

  グレンの魅力。
 声がすげえいい、歌がすげえうまい、ギターがすげえ良くて、すげえ上手い。「その声とそのギターの腕だったら、その1セットだけで一生食って行けるのでは?」と思ったが、「あ、実際、食ってるか」と、ひとりごちた、と言えば、分かるだろうか。
 そして、なにはともあれ、メロディが、おそろしく、いい。ポップなのだが決してベタではなく、シンプルで、少ーしだけひねった、微妙な音の連なりが、ゾクゾクッと来る。一聴して、「いい!」と思わせるわけではないが、ふとした時に「クワッ!」と来て、来たら最後、以後、ずーっと己が脳髄にこびりついて離れない、といった類いの、いいメロディだ。


この日、すげえ良かった曲、ベスト5(順不同)
Squeezeを聴いてみたい人は、ここで試聴されたし
(iTunes StoreでのiMix by ロックンロール・ブック)

1.「Up The Junction」
from Squeeze『Cool For Cats』(1979年)

c0005419_1423588.jpgスクイーズ中、ベスト3に入るナンバー。地味に淡々と進む中、最終的に、号泣している自分に気づくはず。



2.「King George Street」
from Squeeze『Cosi Fan Tutti Frutti』(1985年)

c0005419_143420.jpg今回は、一発目、ピアノ弾き語りで披露。『Cosi Fan Tutti Frutti』は、比較的地味な作品だが、静かな名曲が多い。



3.「By Your Side」
from Squeeze『Cosi Fan Tutti Frutti』(1985年)

c0005419_143420.jpgこれも「King George Street」と並び、静かな名曲。クワッとくる。



4.「Another Nail In My Heart」
from Squeeze『Argy Bargy』(1980年)

c0005419_1434387.jpgコステロばりのポップチューン。『Argy Bargy』は布袋と氷室の青春の1枚としても有名。




5.「Black Coffee In Bed」
from Squeeze『Sweets From A Stranger』(1982年)

c0005419_1441167.jpgオーディエンス参加型スクイーズの代表曲。
アンコール最後の曲として、我々はコーラスを担当。グレンがはじめにやり方を指示するも、オーディエンスはすでに知っている、言わずもがなという濃い空間がそこに。



6.「Hourglass」
from Squeeze『Babylon and On』(1987年)

c0005419_1445690.jpg早口でまくし立てる軽快なポップソング。レコードではエレキのギターソロをアコギで同じようにやった。




7.「If It's Love」
from Squeeze『Frank』(1989年)

c0005419_1453174.jpgスクイーズを代表する小粋なラブソング。クリス・ディフォードの詩がすげえ。オーディエンスがコーラスで参加。


8.「Tough Love」
from Squeeze『Babylon and On』(1987年)

c0005419_1445690.jpg隠れた名曲、ということを今回のギグで再発見した人は多いはず。



9.「Tempted」
from Squeeze『East Side Story』(1981年)

c0005419_148025.jpg世間的に最も有名と思われるスクイーズの代表曲。映画『リアリティ・バイツ』でウィノナ・ライダーとその友人がカーステから流れるこの曲に合わせて歌っているシーンは秀逸。レコードではポール・キャラックがヴォーカルで、グレンはサブだが、今回は、当然全部一人で歌った。


10.「I've Returned」
from Squeeze『Sweets From A Stranger』(1982年)

c0005419_1441167.jpgヴォーカルはじまりのナンバー。グレンの声は本当にすげえということがよく分かる。



11.「Jolly Comes Home」
12.「Some Fantastic Place」
13.「Third Rail」
from Squeeze『Some Fantastic Place』(1993年)

c0005419_2183543.jpg個人的な話で恐縮だが、93年のリリース時、ロンドンで買ったアルバムのナンバー。当時スクイーズがロンドン郊外でライブを演るというので、日本では絶対見られないだろうと、大枚はたいてわざわざ駆けつけたのだった。だが、半年後の94年2月。きゃつらは初来日を果たした。


14.「If I Didn't Love You」
from Squeeze『Argy Bargy』(1980年)

c0005419_1464292.jpgアルバム発売時、この曲が実はシングルカットされていたという事実は、スクイーズマニアの中でもあまり知られていない。地味なポップの中でもさらに地味なポップソングのこの曲がシングルつけ!


15.「Annie Get Your Gun」
from Squeeze「Annie Get Your Gun EP」(1978年)
スクイーズ最初期のナンバー。のっけから風刺が効いている。


16.「Take Me I'm Yours」
from Squeeze『Squeeze』(1978年)

c0005419_1461362.jpgスクイーズ最初期のナンバー。レコードはニューウェーブ色が強い。



17.「Untouchable」
18.「Neptune」
19.「Hostage」
from ソロ・アルバム『Transatlantic Ping Pong』(2006年)

c0005419_149487.jpgスクイーズに比べるとさらに地味になった印象があるが、相変わらずのグッドメロディーメイカーぷりを発揮。長く聴き続けられそうな大人のポップアルバム。


総評
スクイーズはアレンジも秀でているが、なんといってもヴォーカルとメロディがすげえので、この「グレン・ティルブルック流しライブ」で、その魅力のほとんどを味わえるし、逆にヴォーカルとメロディだけに特化している分、誤魔化しが効かないため、いよいよそのすごさが明るみに出たという次第だ。
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# by ichiro_ishikawa | 2006-10-15 23:49 | 音楽 | Comments(0)