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『The Brill Building Sounds』到着!!

 都内中古CDショップ、amazonを始めとするウェブ店をしらみつぶしに回ってもまったく入手できなかった、1958〜64年のアメリカン・ポップ・ミュージックを網羅した伝説の4枚組BOX『The Brill Building Sounds』をアメリカのamazonでやっと見つけ、先日アメリカ大陸を横断、大平洋を越えてアジアの片隅まで届かせた。
 c0005419_0305721.gifこれで、ロックンロールが死んだ'59年とビートルズがアメリカを制覇した'64年の間の空白を埋める、ポップミュージック史上類い稀に見る黄金の季節が、いよいよ明らかになる!
 ポップ・ミュージックを俯瞰しながらかつ同時に細部に食い込まんとするロックンロールブックでの「音楽の旅編」のハイライトのひとつとなるであろう、「ポップ・ミュージック・クラシック特集」がおそらく3月中には繰り広げられることになろう。
 まずはこの4枚組全74曲を、フィル・スペクターBOX『Back to MONO 1958-1969』と並行してグワッグワッと聴き倒し(ダンスせざるを得ない)、ロックにおけるメロディの位置、ビートルズがあのように生まれた背景、大滝詠一や山下達郎のポップネスの噛み締め方、その他もろもろの想念が、自ずと我が1つの脳髄を駆け巡ることになるだろうと踏んでいる。

by ichiro_ishikawa | 2005-03-10 00:33 | 音楽 | Comments(1)  

ポップとは

 10〜20代というのはとにかく得体の知れない不満をなかば故意に燃やし続ける季節だというのは、誰にも当てはまるとは限らないが、自分はまぎれもなくそうであった。
 それは、えてして、すべて逆にいくという極めて幼稚なレベルで始まる。
 明るく前向きに声が大きくという社会的に理想的な人物像があるとしたら、とにかく暗く後ろ向きでぼそぼそとマーマー(つぶやく)ことを良しとした。テレビをはじめとする大メディアから漏れ聞こえるすべてをシャットアウトし、社交界を蔑視し独り地下室で死んだ人とのみ交わった。音楽や映画に関しても、大国アメリカ的なるものに背を向けることから始まり、イギリスのインディー・ミュージックやヨーロッパのカルト作品に耽溺した。
 30代に突入し、てめえのそれまでの人生を人並みに俯瞰できる目を獲得したとき、それらがいかにカッコ悪いか、が分かった。
 否定も肯定も、どちらにしても同じことだった。

 大滝詠一が33歳で音楽史上類い稀なる大ポップアルバム『ロング・バケイション』を作ったというのは、興味深いことだ。いうまでもなく大滝は、20代でそれまでの歌謡ポップ界を全否定して、はっぴいえんどで活動し、不滅のロックアルバム『風街ろまん』を作った人間だ。以後も自身のレーベルを立ち上げたり、おのが表現欲求に忠実な活動をしつこく続けた。そこから『ロング・バケイション』への跳躍、その歩幅が気になるのである。
 『ロング・バケイション』は大ベストセラーになり、大滝の代名詞と化した。親しみやすいメロディーと穏やかなボーカル、これぞポップ・ミュージックの核心をズバッとついた見事な傑作である。その奥に広がる実に深遠な世界、というのは確かに存在するけれど、とりあえずどうでもいいことだ。その表面の響き、そこがなぜかくもポップでなければならなかったか。それはやはり、大衆とのコミュニケーション欲求であった。てめえが独りもんもんと地下室で実験していたことが大衆とどう交わるのか、どう響くのか、どう揺り動かすのか、大滝はこれを試した、試さざるを得なかった。
 アホは天才の言う事を理解できない。天才にはアホの言うことなどまさにアホらしく、凡人の考えなど退屈でしかない。凡人はアホを蔑視し、天才を不必要に畏怖する。そんな彼らに共通に響くあるものとは何か。
 否定も肯定もつまらない。スタイルというものがどうも信用できない。そうしたもの超えた、どんなところからも遠く離れながらどこにでもいるという状態、こうしたものに、強く惹かれた。
 大滝は自分の中のアホと天才、そして最も多くを占める凡才、それらすべてを満たしうる創造を行った。『ロング・バケイション』はその結晶である。

 ジャケットを飾り、曲を大音量で聴き、ともに歌い、奏でる。歌詞(松本隆がその多くを手掛ける)を全文書き取りし、コード進行やメロディを分析し、バックグラウンドとなったであろう、フィル・スペクターなどのアメリカンポップス、ビートルズ、ビーチ・ボーイズなどのロック、プレスリーのセクシャリティ、アメリカン・ルーツミュージックといった音楽たちをことごとく参照する。そうやって、今、この『ロング・バケイション』という普遍に身を投じている次第だ。
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             『A LONG VACATION』大滝詠一

by ichiro_ishikawa | 2005-01-12 20:48 | 音楽 | Comments(6)