某WINSにて、エリザベス女王杯終了直後、
「な⁈ ヴィブロスなんて来ねえだろ!」
と、鬼の形相で、絶叫しながら走つてゐる輩を見た。
これはどういふ状況か。
考へられるのは以下の3点。
1)一番人気のヴィブロスを切つた自分を褒め称えてゐる
2)ヴィブロスを買つた知人を罵倒してゐる
3)ヴィブロスを買つた見知らぬ大勢の人間を罵倒してゐる
1だとすると、冒頭の叫びの時、笑つているか誇つてゐるか、
いづれにしろ歓喜の表情になるはずである。
しかしこの輩は笑つてゐるどころか、怒つてをり、
そして、泣いてゐた。
嬉し泣きではない。悲痛な、明らかな悔し泣きであつた。
では2か。見渡したところその場に知人らしき人はゐない。一人で絶叫してゐた。
では3か。そんな叫んでまで、泣いてまで、見知らぬ他人を罵倒することにどんな意味があるのか。
そも自分は一番人気を信じず、見事に切つたのだから、それでいいではないか。
答へはかうであらう。
自分は一番人気のヴィブロスを見事切つた。
しかし買つた馬も来なかつた。つまり負けた。
ヴィブロスを切れてゐただけに悔しさは倍増である。
つまりヴィブロスを切つた英断の誇りと、
馬券を外した無念が錯綜し、
取り乱した。
現地やWINSには取り乱した輩がうじやうじやゐる。
人間とはこんなにも哀れで見苦しいものか。
あゝ人間…。