Nirvanaのアンプラグド「プラトー」

Nirvanaのアンプラグド(1994)に「プラトー」といふミート・パペッツのカバー曲が入つてゐて、折に触れ、聞こえるがままに適当な英語で歌つてきたのだが、四半世紀を過ぎたここに来て、本当は何と言つてるのか確かめたくなり、コーラス部分の本格的な聞き取り、いはゆるディクテーションをやつてみた。もう限界といふところまで都合10回はリピートして聞き書き起こしたのが以下。


[聞き書き起こし]
nothing on a top 
of the bucket it a map
in a new street back about birds
see a lot of there
but don't be scared
who needs actions
when you got words

赤字が間違つてゐた部分。正解はかうだつた。

[歌詞カードより]
nothing on the top 
but a bucket and a mop
and an illustrated book about birds
see a lot up there
but don't be scared
who needs action
when you got words

2行目と3行目に難儀した。違ふとは思つたがやはり違つた。
かういふ(赤文字部のやうな)ストレスが置かれず軽く発音され、かつ前後とのリンキングがバシバシ決まつてゐるものはやはり厳しい。
以下、考察。黒太字が聞き違ひ、赤太文字が正解。


(考察1)
1行目。
atheは、違ふが聞き取りは困難。文脈、意味で判別するしかない。ただ聞き違へても大抵の場合、大勢に影響はない。

2行目。
of the(オダ)but a(バラ)とでは、まるで違ふが、topと来れば、of the だらうといふ先入観が走つた。
bucket it a map(バケリラマップ)
bucket and a mop(バケラナモップ)だつた。
「〜t it a 〜」(リラ)「〜t and a 〜」(ラナ)も、特に「n」の音の有無がまるで違ふが、「なんか発音が早えので焦つて聞き違へた」形だ。
mapmopの母音は、「エ的なア」と「オ的なア」で、違ふと言へば違ふがほぼ同じなので識別困難ではあるが、バケツと来ればモップといふところに思ひ至らなかつたのが敗因。
英語の母音は数が多いだけあつて甚だ境界が曖昧で、アイウエオの5音のどれかに集約してしまふ日本語耳にとつては難所だ。
また英語は、語やフレーズの中でストレスの置かれる部分以外は実に適当に軽く発音される(あるひは発音されない。同語源?のフランス語などは、発音しない、と頑なに決めてゐたりもする)。おそらくネイティブも文脈のカンで識別してゐるのだらう。
正確には、発音されてなくても、「そこにある音がある」ことが、共有されてゐる。あと、実は「息」「間(ま)」などがそれを代替してゐる(ことも共有されてゐる)。

(考察2)
and an illustrated book about birds
in a new street back about birds
とした件。
正解は、エナニュストレイ・ブカバウブーズ
これを、エナニュストリート・バカバウブーズ
と聞いてしまつたワケだ。

ここは細かい解説が必要だらう。
まづは音数。本来は、
and / an / i - llust - ra -ted / book / a - bout / birds と計10音だが、実際は、
andanillustrated / booka/ bout /birds
と4音ほどで言ひ切つてゐる点。
それは当然リンキングがビシバシ決まつてくることを意味する。
and an = アンド・アン→(ア的な)エ・ナ
※これを、in a(イ的な)エ・ナと聞き違へ
an illustrated
=アン・イラストレイテッド → アニュストレイ
イラストレイテッドの頭は前置詞anとのリンキングで「アニ」となり、かつイ ラストレイティドでなくイリュージョン的にイ・リュストレイティドと発音されてゐたことで、また、母音に続く「ll」はユになりがちなことで、アニュストレイティド
さらに過去分詞のティドは軽ーく、付け足しのやうに発音されることでほぼ聞こえず。結果、①からの連続で、
エナニュストレイ
となつてゐた。
※「illustrated」はてめえの語彙にそんなに親しいわけでもなく、やや特異な単語であるため意表を突かれた形で想像が及ばず、より親しい語彙の「street」と聞き違へた形。

book about birds
ブック・アバウト・バーズ→ブカバウブー
※「about」冒頭の「a」は、この語のストレスが「bout」に来ることから、殆ど吐息程度にしか発音されないことはイージーなのでクリアしたものの、②でillustrated」を「street」と思ひ込んでしまつたものだから、「book」を「back」と聞き違へた形。

意味としては、「(バケツとモップ)と、ある鳥イラスト本」が正解だつたわけだ。
in a new street back about birdsでは、文法的にも破綻してゐて訳せない。

(3)
a lot up(ア・ロラッ)a lot of(ア・ロロッ)とした。いづれにせよ直後に「there」が来ることで、その前の「up」の「p」にしろ、「of」の「f」にしろ、消える(発音されない)わけだが、これは文脈的に、前にバケツやモップや鳥本ら多くのものが「top」にある、といふことで「up」と、わかるところであつた。
なんでもかでも「a lot」とくれば「a lot of」と来がち、としたことも敗因。

(4)
最後、actionactionsと勝手に複数にしてしまつた。
前置詞が聞こえなかつたのでアクションは可算名詞だらうから「ズ」でもつけとかなきやといふ老婆心と、アクションズ・スピーク・ラウダー・ザン・ワーズといふことわざが頭にあつた。実際この歌詞にも最後に「words ワーズ」が出てくるからここもアクションズだらうと。しかし実際はアクション。不可算名詞としてのアクシヨンだつたやうだ。

まとめ
●聞き取りは、24?もある母音と、ストレスの強弱により消え入る音(特に子音)、リンキングの識別がキモ。
●しかしそれは、慣習、文脈により想像で補ふ、あるひは(無意識的に)修正することが重要。
●つまり、そのためには、文法的知識が血肉になつてゐることと、意味をおさへながら聞く(当たり前だが)ことが本当のキモ。


by ichiro_ishikawa | 2019-11-13 11:27 | 音楽 | Comments(0)  

名前
URL
画像認証
削除用パスワード

<< 目下の課題 池田雅延「随筆 小林秀雄」が完結 >>