この世の真実を陥穽を構へて捕へやうとする習慣が身についてこの方、この世はいづれしみつたれた歌しか歌はなかつた筈だつたが、その歌は俺には見知らぬ甘い欲情を持つたものの様に聞こえた。で、俺は後悔するのが人よりいつも遅かつた。
小林秀雄「Xへの手紙」
新しい学校のリーダーズを知つたのは、昨年の紅白歌合戦だから、まだ2週間しか経つてないわけだが、おそらくデビュー以来のファン並にその軌跡や作品を知り抜いた。今年に入つてからの2週間、毎日24時間、新しい学校のリーダーズを聴き倒してきたからだ。
新しい学校のリーダーズは、2015年デビューだからすでに8年選手、今年9年目になる。レコードデビューは2017年だが、そこからでも6年経つてゐる。そこそこの中堅である。ヒット曲「オトナブルー」は2020年5月のリリースで、3年越しのヒットである。つまり、ポッと出ではないのであつた。しかし、4人のうち3人は、齢まだ22歳、1人も25歳である。なんせデビューが中2と高2である。1年目からライブをしまくつてゐるからステージパフォーマンスもベテランの風格なわけだ。
つまり、いまのこの域に達してから、俺のアンテナに引っかかつたわけだが、やはりデビュー後3年経つてからやつと気づいたゲスの極み乙女同様、俺は気づくのが人より遅い。しかし、気づいてからの熱狂はものすごく、往年のファンをすぐに超え、誰よりも好きになり、かつそれが持続する、といふ癖(へき)がある。
荒井由美(〜86年までの松任谷由実)に至つては、その凄さに気づいたのがサブスク解禁時だから、2018年ごろ、つまりデビューから45年後に気づいたことになる。気づくのが遅いどころか、目が節穴といつてもよいかもしれぬ。
そも、ボウイもさうだつた。その凄さに気づいたのがGIGS CASE OF BOOWYのビデオからだから、PSYCHOPATHの少し前、すでにBEAT EMOTIONまで5枚のアルバムを出してゐる6年選手であつた。しかしそこから遡る熱量は凄まじく、突然の解散宣言のときには「ロフト時代から追つてる面(ヅラ)」をしてゐた。
湘南爆走族も知つたのは、少年KINGの連載が終はりかけていた頃で、連載と並行して単行本を遡つて読み漁るのが大変だつた(辛かつた、といふ意味では勿論ない)。
しかし、もつといへば、ビートルズなんて解散してからだし、さらには小林秀雄は死んでからだ。
唯一、ほぼデビューから追つてゐたのは江口寿史と鳥山明、そして池田晶子ぐらゐか。池田晶子は、あつといふ間に逝つてしまつた。
そんなわけで、現役で発展途上の天才と出会ふ、といふことはごく稀なことであり、新しい学校のリーダーズも、昨年の紅白で初めて知つたことを恥じてゐるわけではない。むしろ今さらとはいへ、知れた事自体、ラッキーであつたと思へる。
ひとつ、恐れてゐるのは、今後の作品がこれまでの秀逸すぎる楽曲を超えてくるかどうかだ。デビュー10年を超え30代半ばとなつたゲスの極み乙女は、ちよつと失速してゐる。「ロックは30前半まで」の法則がここでもやはり効いてきた。
新しい学校のリーダーズはまだ22歳(が3人と25歳)だから、当面、安心だ。「オトナブルー」がボウイの「B.BLUE」だとして、あと数曲、アルバム数枚は輝くだらう。30を超えたあたりが勝負どころか。その頃、俺は還暦だ。
ちなみに、山口百恵や中森明菜、和田アキ子といつた昭和歌謡の消化力が指摘されるメインボーカルのスズカは、低音にもましてハイトーンが素晴らしいのと、芸のセンスは竹中直人的なところがある。
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