渋谷陽一の偉業とは、その批評は無論だが、よりわかりやすいのは、経営手腕だらう。
同人誌を創刊するのは容易い。3号までは続けられる。しかし4号目はでないのであつた。
渋谷は最初からビジネスとして展開させることを自らの命題として居た。書き手であり編集者でありながら、経営を見据えて居た。
経営だけなら出来もしよう。書くことだけならできもしよう。どちらもやれたことは特筆されるべきことだ。
しかし、それは渋谷にとつてふたつのことではなかつた。
渋谷の思想の根本は、普遍的な他者を実現する意志であり、それは自らの批評原理で、それをミュージシャンにも求めた。
簡単に言ふと、売れなきゃダメといふことだ。
表現はゴールではなく、届けること、伝はることがゴールなのであつた。その達成の証明が売れるといふことで、売れなければ、継続が出来ない、といふか、継続する意味がない。
そのシビアさは、内外でいろいろな軋轢を生じさせもしただらうが、そのシビアさがなければ、いまかうした市井の一感想ブログから公の場でのプロ作家による論まで、さまざまに語られるといふじたいにはなつて居ない。
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