長渕のラブソング、この10曲
長渕はシンガーラブソングライターとして相当秀逸で、ハイブロウで、すげえセンスのいい歌手だ。「筋肉バカ右翼」という近年のレッテルは、いよいよレッテルに過ぎない。
とはいえ、メロディこそハイクオリティであれ、コード進行などはごく普通のポップソングと変わらないし、歌詞を見てもそんなに「詩人」然としているわけでもない。
特筆すべき点は、「男ごころ」というものを恐ろしく生々しく、ともすれば耳を塞ぎたくなるほど、リアルに抉って来るというところにある。
長渕のラブソングで特徴的なのは、「君にさよならを言わなければならない、気まぐれな男の苦しさと哀しみ」が、ほとんどだということだ。愛は、生まれ、生き、そして死ぬ。長渕が繰り返し歌うのは、「愛の死」なのであった。
恋とは必ず傷つくものだ。寺尾聰は低音で言った。「傷つかない恋なんて たぶん恋じゃないぜ」(「Habana Express」)。
そんなもの、本当は耳を塞いでいたい。だから、すこぶるうまくいっている時、人は長渕を聴かないが、本当に疲れ果てたとき、長渕に手が伸びるのではないか。長渕を聴く人は、恋の病で昏睡状態にある人だけである。長渕の歌は痛切なのだ。
ラブの哀しみはいろいろあろう。片思い、フられての別れ、死別…。一番キツイのは、言わずもがな、「君にさよならを言わなければならない」時である。それはあまりにもキツく、できれば「さよならと言ってくれ」と歌いたいのだった。
18. 結晶
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 瀬尾一三、長渕剛
(included in『Captain of the Ship』1993.11.1)
17. 心配しないで
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 瀬尾一三、長渕剛
(included in『Captain of the Ship』1993.11.1)
■あの「Captain of the Ship」の前後に配されたせいで、影が薄くなっているのが残念だ。「坊さん後」、珍しいラブソングの佳曲である。
16. I love you
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 瀬尾一三、長渕剛
(included in『Japan』1991.12.14)
■いつの世にもいるブランドに群がるバカ女。長渕は「そんなことより俺はお前をベッドに引きずり込み、お前の胸にしゃぶりつく」のだが、それは「女の前で三つ指をつき舌の先を転がすよな玩具の様な優しい男にゃなりきれねえ」(同アルバム収録「俺の太陽」)からだ。だが真意は、最後のこのフレーズなのだ。「そりゃお前が言う一流という意味も分かるけど 愛し愛される怖さを知る一流になりたい」
15. 女よ、GOMEN
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 矢島賢
(included in『Jeep』1990.8.25)
■ロック調のエレキサウンドだが、シングル「JEEP」のカップリングでは「女よ、ごめん」というタイトルで、アクースティックヴァージョンとなっていて、そちらの方が比較的いい。「とんぼ」をすでに経て、“気難しくこええ大御所”が定着してきた当時、90年の2月28日に出演した夜のヒットスタジオで、「硬派」「男」「魂の叫び」みたいなキャッチをかぶせられることに閉口した長渕は、「あれ〜? なんで〜?」とずっこけ、「俺は女のケツばっか追いかけていただけ」と、居を正して恐る恐る接して来た古館を逆にずっこけさせた。過剰に「硬派」のレッテルが貼られる事が多いが、長渕は本来はナンパであり、本気でナンパだから硬派なのであった。「考えてみりゃ女にゃ謝りっぱなしだった」と、この曲ではストレートに吐露するが、長渕のたいていのラブソングはこの謝罪の念を詩的に表現している事が殆どだ。まあ、女の方は、ケロッと忘れていて「ん?何が?」みたいなもんなのだけれど。
14. 生意気なパートナー
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 瀬尾一三、長渕剛 & The Band of Spirits
(included in『Hungry』1985.8.22)
■これは、俺への愛を失った君への何故ラブソング。「報われぬ愛ほど惨めなものはないと分かったとき 別れ上手なお前を今では愛しく思える それは強がりじゃなくて 嵐の後の静けさよ」
13. 海
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 瀬尾一三
(included in『Jeep』1990.8.25)
■得意の「E、G#m7、C#m、F#m7、A、B使い」のラブソング。モチーフは「Time Goes Around」に近い。
12. シェリー
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 笛吹利明
(included in『昭和』1989.3.25)
■オープンGチューニングによる、add9や13thを多用した、長渕の中では最も凝ったコードからなる感動作。2分音符を効果的に使った間の効いたアルペジオが美しくせつない。
11. 炎
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 瀬尾一三、長渕剛
(included in『Japan』1991.12.14)
■「シェリー」「海」と続く、ヤクザ期ラブソング3部作の3作目。「行かないでくれ 抱きよせるたび 哀しみに打ちつけられるのは 愛してるからだ」
10. PLEASE AGAIN
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 瀬尾一三、長渕剛
(included in『License』1987.8.5)
■俺への愛を失った君への何故ラブソング。「鏡の前で身を沈めながら髪を梳かしてる 行き詰まる様な苦しさが胸に突き上げて来た」。ここで俺は嘔吐する。よく死ななかったな。
9. 俺たちのキャスティングミス
作詞・作曲 長渕剛 / Strings Arr. 瀬尾一三
(included in『Stay Dream』1986.10.22)
■「Hello 悲しみよ!」「少し気になった Breakfast」へと続く『Stay Dream』内、悲しみ3連打の幕開けをなすラブソング。
8. 少し気になったBreakfast
作詞・作曲 長渕剛
(included in『Stay Dream』1986.10.22)
■映画「タクシードライバー」からの引用と思われる朝食の光景をイントロに、君にさよならを言わなければならない、気まぐれな男の苦しさと哀しみが綴られていく。「愛し合いたい俺がいる 一人に酔いたい俺がいる 夢が叶えば壊したい 気まぐれな俺の愛の形」
7. COME BACK TO MY HEART
作詞・作曲・編曲 長渕剛
(included in『Hold Your Last Chance』1984.8.18)
■愛が壊れた男の痛切な叫び。「恋なんてもう二度とするものか 愛してるなんてもう二度と誰が言うものか 壊れた愛のかけらを一つ二つ広い集めて 放り投げたため息に君の笑顔が映っている いい加減な暮らしの残り火よ 消え失せろ 思い出にしがみつくほど僕は弱虫じゃないんだ」
6. TIME GOES AROUND
作詞・作曲・編曲 長渕剛
(included in『Hold Your Last Chance』1984.8.18)
■エレキギターによるアルペジオがかなり衝撃的な情事ソング。別れではなく最中を描いている。「ろくなもんじゃねえ」以前に「ピピイピーピピ」とハミングしている。
5. パークハウス 701 in 1985
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 瀬尾一三、長渕剛
(included in『License』1987.8.5)
■「一緒にいることが結構つまらない」というドキッとするフレーズ、及びEの低音でギターが刻まれていくイントロから、「愛情…それは何? 愛情…寂しがり屋たちの残酷なメロディー」というエンディングまで、終始後頭部の奥の方をピキピキさせる。長渕ラブソングの真骨頂、君にさよならを言わなければならない男の苦しさ、である。「一人が寂しいからこそ二人になった けど 二人になったら窮屈になるのかい 愛って奴は何て身勝手なもの そう考えたらあまりに哀しくて」「恋と愛と暮らしと男と女 愛の形はやっぱり変わってっていくもの そいつを分かりたくない俺は愚か者 いったい 幾つさよならを言えばいいのか」。
4. 何の矛盾もない
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 瀬尾一三、長渕剛
(included in『License』1987.8.5)
■Cadd9(4capo)を基調に展開する究極のラブソング。この曲以降、ミュージシャンの中でCadd9は「なんの矛盾もない」と同義になった。再婚相手の志穂美悦子に贈った歌というのは有名だが、とことん徹底して個人的であればそれは普遍に達するということが証明されている。
3. Don't Cry My Love
作詞 吉見佑子、長渕剛 / 作曲 長渕剛
編曲 瀬尾一三、長渕剛
(included in『Heavy Gauge』1983.6.21)
■石野真子との蜜月時に作られた曲だが、リリース時には離婚。結果的にその別れを象徴する曲となった。ここまで「別れの哀しみ」を正確に綴った曲は空前にして絶後ではないか。「きっと同じ人生(みち)を同じ歩幅で歩いて行けたら 君をこんなに疑わせずに済んだのかもしれないね ひとつになっても ひとつになれないよ」
2. 交差点
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 笛吹利明、長渕剛
(included in『時代は僕らに雨を降らしてる』1982.9.1)
■「君の胸の痛みが僕に分かるといいね 無理に笑顔で別れた涙色の哀しい交差点」「行かないで 僕の側から 泣かないで もう離しはしないから」
1. 愛してるのに
作詞・作曲 長渕剛 / 編曲 瀬尾一三
(included in『時代は僕らに雨を降らしてる』1982.9.1)
■「ひとつだけ聞いてもいいかい」。その第一声で、“あ、哀しいことが起こってしまう”と感じる。案の定、「出会った頃の二人に 今すぐ戻れるならば きっとうまく行けるさ こんなに愛してるのに」
by ichiro_ishikawa | 2006-12-17 04:14 | 音楽 | Comments(1)
「長渕剛王決定戦」に出たがるぐらい長渕ファンの友人がいて
しょっちゅう鼻歌を聞かされているのですが
このランキングに入っている曲だとシェリーぐらいしか歌わないので
他の曲がピンと来ませんでした。
友人に聞いてみます。
最近は、あまりラブソング書いてないんですかねぇ
あと
ここまできたら20曲にしちゃいましょうよ