古典礼賛
80年代をティーンネイジャーとして過ごした36歳のあたしは、20代においては、60〜70年代が、掘り下げるべき古典であった。古くてもビートルズ、ストーンズ、そしてジョン・レノン絡みでエルヴィス。せいぜいベスト盤でのボ・ディドリー、リトル・リチャード、チャック・ベリー、バディ・ホリーどまりだった。
80〜90年代前半は、かろうじてロックやブラックミュージックがまだ光り輝いていたから、同時代を追いながら、同時に古典もひも解くという塩梅で、せわしなかったが、1997年からロックもブラックミュージックも全くつまらなくなってしまったので、その頃から、もっぱら過去を愛でるだけの日々になり、現在に至っている。
文学とは違って、ポップ・ミュージックの世界は19世紀後半〜20世紀初めが、その幕開けで、レコードということでいえば20年代からしか音としては聴けないから、掘り下げるのもそんなに気が遠くなる話ではない、というのが良い。
最古のものはアメリカのソング(小唄)やバラッド(物語唄)、ゴスペルやクラシック・ブルーズであり、そこからカントリー・ブルーズ、スウィング・ジャズ、ジャンプ、ジャグ、シティ・ブルーズ、ビ・バップ、初期リズム&ブルーズと大黄金期に突入する。それは30〜45年頃である。ここら辺がやはり一番面白い。
45年以降、いわゆる戦後(第2次世界大戦というのは本当にどでかい節目である)は、アーバン・ブルーズ、リズム&ブルーズ、ハード・バップなど、より洗練されていって50年代にロックンロールが爆発するわけだが、この辺りもまだまだ刺激的だ。
60年代、特にブリティシュ・インベイジョン以降は、ロック黄金期、ブラック・ミュージックにおいてもソウルが花開き、その辺りはポピュラーミュージックが世界をひっくり返す力を持った時期で、大変スリリングなのだが、ちょっと聴き飽きた感があり、食傷気味、ということで、今は、「20年代〜50年代がすごいことになっている」わけであった。
20代までは、とにかく新しいものを求めていた。「ブルーズをこよなく愛し、デブでハゲのくせに、長髪でヒッピーまがいの恰好をして、てめえの青春時代のノスタルジアに浸っているオッサン」、というのが、とりあえず嫌悪の対象であった。そういう輩はいつの時代にもいるようで、今なら、「LEON」「OCEAN」「Z」「BRIO」「ROLLING STONE日本版」を愛読してしまう人間がそれにあたるのだろう。
てめえがオッサンになったいま、我が身を振り返るとどうか。そういうスタイル優先、結局てめえが可愛いだけのオッサンとは一線を画しているか。どうか。
今は、「万葉集」「平家物語」「徒然草」あたりがジャストで、カントリー・ブルーズとビ・バップを研究中だ。今起こっていること、これから起こりうることにはほとんど興味が湧かず。新聞とテレビはここ10年見ていないし、流行語も知らぬ。でも、そんなの関係ねえ。過去を積極的に「思い出す」ことで日々充実している。だが、こんなことをしている場合ではない。
by ichiro_ishikawa | 2007-10-29 01:30 | 文学と音楽 | Comments(2)
あと、「あたし」つけ。あと、「すげえ」とか「スリリング」とかのその辺のところがどうだかは、そんなの聞きたくねえ。そのすげえところを聴いたり観たりして、どう自分にきたかとか、どう人生にきたかとかを、イチロックの言葉で聞きたい。もうなんかその説明とかは(おもしろいけど)飽きました。以下、あ、いや以上。