2010年 07月 12日 ( 1 )

 

名著「憚りながら」

c0005419_21512648.jpg


 後藤忠政『憚りながら』読了。
 山口組系元後藤組・後藤忠政組長の自伝。半年に渡る50時間に及ぶインタビューを筆記したもの。編集が上手く、彼ややくざ世界、実際の事件の数々の知識がなくてもストレスなく読み進められる。

 教会の中にも私利私欲や保身の固まりの様な人間がうようよいる事を身を持って知っている俺は、会社員、聖職者、やくざ、極道という肩書きはあくまで副次的な、ある傾向を示すものぐらいにしか捉えておらず、あくまで肝心なのはその人格、そここそを見極めるよう努めているわけだが、本書の著者、後藤忠政はすげえいい。どんな理屈があれ暴力はまったく肯定できるものではない、なんてことは、誰しも戦争反対なのは当たり前であるのと同じように、しごく当たり前の大前提で、やくざ=ろくなもんじゃねえ、と一蹴してしまっては見えなくなるものがあり、それは政治家や医者、教職者、聖職者にろくなもんじゃねえ奴がいる事を隠してしまいもする。基本的に、俺はやくざが大嫌いだが、聖職者だって大嫌いだ。
 本書は「本人の語り」であるから、賢明な読書人は、ここにデータを求めるなんて馬鹿げた事はしないはずで、本質は、人間に取って何が大事か、これを読み取る事だ。事の是非を問うものではない。そういう意味で、本書を貫く、後藤の生き様、価値観に俺は非常に共鳴したし、後藤忠政、得度名・忠叡という人間に惚れた。彼が愛した友の句「俺に是非を説くな 激しき雪が好き」も、すげえいい。彼に会ったらガッチリ握手したい気分だが、彼には指がない。

by ichiro_ishikawa | 2010-07-12 00:01 | 文学 | Comments(0)